56 問題とは何か③ 問題を発見・特定できているか

問題解決のためのフレームワーク

自治体では、いろいろな問題が日々発生しています。住民からのクレーム、施設の老朽化による事故の発生、手当の誤支給や個人情報の紛失などのミスなど、本当に様々です。

住民からの「ホームページの児童扶養手当の説明がわかりにくい」のような苦情であれば、すぐに修正が可能ですので、対応はそれほど難しくありません。しかし、様々な事情が絡み合って、すぐに対応できないものや、何が本当の問題なのか、時間をかけて調べないとわからないようなこともあります。

例えば、次のような事例があります。

<事例>
生活保護課では、住居を喪失、またはその恐れのある世帯に対して家賃相当額を支給する住居確保給付金の事務を行っている。今年に入り、新型コロナウイルス感染症の影響で、その申請数は昨年の10倍以上となった。しかし、担当する自立係の職員数は増えていないため、住民への支給決定が遅れる事態が発生している。

このため、課長は自立係長以外の係長たちを集めて、応援体制を構築したい旨を話した。しかし、係長たちからは、「現在の業務で手一杯で、応援する余裕がない」「日中、自立係の職員は無駄話をしており、まだまだ余裕があるように見える」などの意見が出て、自立係の応援に全員が反対した。

本事例を課長の立場で考えてみましょう。多くの申請が来ているにも関わらず、支給決定が遅れれば、住民サービスの低下になります。このため、どうしても人手が必要ですが、人事課に職員増を求めても、年度の途中では実質困難です。また、新たに会計年度任用職員の採用や、他課に応援を依頼する方法もありますが、いずれも時間がかかってしまいます。

以上を踏まえると、やはり課内の応援体制が最も現実的です。しかし、係長たちは反対していますので、これを解決する必要があります。この場合、なぜ係長たちが反対しているのかを調べる必要があります。

先の「自立係の職員は無駄話をしており、まだまだ余裕があるように見える」との意見からは、自立係職員に対する不信感が読み取れます。そこで、その係長を呼び出して個別に話を聞いてみると、「自立係長は、自分は忙しいからと、いつも部下に仕事を押し付けている。そのくせ、係長自身は仕事に関係のないおしゃべりばかりしている」と言います。

そこで、自立係長に聞くと「昨年までは、事務を熟知していたA主任がすべて対応してくれたが、異動してしまった。だから、今年はB主任に任せている」との話がありました。つまり、他の係長たちは自立係長に対する不満があるために応援を拒否しており、問題は自立係長の業務のやり方にあったことが判明するわけです。これが真に解決すべき問題です。

課長が「係長たちが反対しているから、もう手の施しようがない」と諦めてしまっては、この事態を解決することはできません。課長としては、「何が本当の問題なのか」を発見し、特定することが必要となります。

コメント

タイトルとURLをコピーしました