54 問題とは何か① 誰の問題か 

問題解決のためのフレームワーク

これまで、問題解決の思考法やフレームワークについて解説してきましたが、今回からその前提となる「問題とは何か」について考えてみたいと思います。「問題」とは、簡単に言えば「解決すべき事項やトラブル」ですが、これでは抽象的で、解決策を考えるには漠然としています。

次の事例をお読みいただき、皆さんが考える「問題」を指摘してください。

<事 例>
防災課では、各地域で結成されている自主防災組織が独自に防災訓練を実施するときに、防災グッズを記念品として渡している。ある日、高齢女性が窓口に訪れたので、今年入庁した女性職員が「おばあさん、何か御用ですか?」と声を掛けた。

すると、その女性は「おばあさんとは、何という言い草だ! 私は、市議会議員の〇〇なのに、顔もわからないのか。今日は、記念品を取りに来ると、前もって課長に伝えていたのに、この対応はなんだ!」と声を荒げた。その議員は怒りっぽいことで有名で、議長経験もあるベテラン議員だった。たまたま課長は電話中だったが、窓口の異変に気付き、驚いた様子だった。

さて、この事例の問題とは何でしょうか。本来は、議員が記念品を受け取るだけのことですが、トラブルが発生してしまい、円滑に事が進みませんでした。

この事例では、まず「誰の問題か」という問題の主体を考える必要があります。トラブルが発生した理由として、①課長が職員に議員が来ることを伝えていなかった、②女性職員が「おばあさん」と声を掛けた、が読み取れます。そうすると、①は課長の問題、②は女性職員の問題、もしくは女性職員への接遇指導が不十分だった課長の問題、と言えそうです。

しかし、仮にその議員の顔を知っていたのに、係長が対応しなかったのであれば、③新人職員に対応を任せてしまった係長の問題、とも捉えられます。もちろん、個別の職員でなく、「防災課における組織の問題」と捉えれば、①~③すべてが問題という指摘ができます。

ところで、「怒りっぽい議員」は問題でしょうか。この事例であれば、「あんなことで怒るなんて、議員の方がおかしい」という職員の声も聞こえてきそうです。このため一見問題のように見えてしまいますが、自治体から見れば「怒りっぽい議員」の性格を改めるのは不可能です。

つまり、怒りっぽい性格は議員の問題かもしれませんが、自治体にとっては問題にはなりません。アドラー心理学で言えば、「他者の課題」であって「自己の課題」にはならないのです。

このように、そもそも問題を考える場合は、「誰の問題か」は重要な視点です。これを間違えてしまうと、解決すべき問題を取り違えてしまいます。

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