28 歳出予算の経費の金額の流用 

自治体財政

1 概 要
①流用とは、予算の補正等を行わないで、予算執行上の処理として一定の経費に充てるための財源を他の支出項目に充当すること。
②原則、歳出予算は、各款の間又は各項の間では相互に流用することはできない。
③ただし、各項の経費の金額は予算の執行上必要がある場合に限り、予算の定めるところにより、流用することができる。

2 流用とは
流用とは、予算の補正等を行わないで、予算執行上の処理として一定の経費に充てるための財源を他の支出項目に充当することをいいます。

歳出予算は予算科目として、最も大きい分類が「款(かん)」となり、その下が「項(こう)」、以下「目(もく)」、「節(せつ)」となります。つまり、予算科目とは「款」、「項」、「目」、「節」のことです。

このうち議決科目とは、議会の議決の対象となる予算科目をいい、「款」・「項」が該当します。執行科目とは、議決の対象とならない予算科目をいい、「目」・「節」が該当します。

予算の流用については、議決科目である「款」・「項」については原則禁止されています。ただし、各項の経費は予算の執行上必要がある場合に限り、予算の定めるところにより、これを流用することができるとされています(自治法220条2項)。

具体的には、予算案における予算総則の中で、「歳出予算の各項の経費の金額を流用することができる場合は、各項に計上した給料、職員手当等及び共済費に係る予算額に過不足を生じた場合における同一款内でのこれらの経費の各項の間とする」などと規定されています。

3 執行科目の流用
予算の執行科目である「目」・「節」については議決対象でないため、状況の変化に応じて対応することができます。しかしながら、何でも勝手に流用してしまっては、予算が混乱してしまいます。

このため、「目」・「節」についても原則は流用禁止をしながらも、歳出予算の執行上やむを得ない場合に限り、各目、各節間において相互に流用することができることとしています(予算事務規則などで規定)。

なお、実務では、一旦流用して対応した後、補正予算で本来必要な予算を計上し、その後、流用先(財源が不足したため流用により予算を充当したもの)から、流用元(財源の借入先)に金額を返還したりします。これを「流用繰戻」とか「流用戻し」といったりします。

4 予備費とは
流用とは制度は異なりますが、予算外の支出又は予算超過の支出に充てるため、あらかじめ予算にその使途を特定しないで、一科目として一定の金額を掲げ、予算の議決後において執行機関にその使用を委ねる予備費というものがあります。ただし、議会の否決した費途に充てることはできません。

地方自治法217条には、「予算外の支出又は予算超過の支出に充てるため、歳入歳出予算に予備費を計上しなければならない」とされており、一般会計には必ず計上しなければいけませんが、特別会計については、設置は任意とされています。

なお、流用とは異なり、一度充当した予備費は、たとえその必要がなくなっても繰り戻すことはできません。実際には、年度途中の急な選挙の実施や震災対応などに活用されます。

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