29 総計予算主義の原則

自治体財政

1 概 要
①予算原則とは、予算が明確かつ民主的であるために設けられた予算に関する原則のこと。
②総計予算主義とは、予算は歳入と歳出の相殺などを行わず、収入のすべてを歳入予算に、支出のすべてを歳出予算に計上する原則のこと。
③総計予算主義の例外として、一時借入金の収支、決算剰余金の基金編入、基金の繰替運用などがある。

2 予算原則とは
自治体は様々な行政活動を行っていますが、それに伴い予算も複雑多岐にわたっています。しかし、一方で予算は明確かつ民主的であることが求められており、このためいくつかの原則が設けられています。これが予算原則です。

具体的には、次の7点があります。
①総計予算主義の原則
②単一予算主義の原則
③予算統一の原則
④予算事前議決の原則
⑤会計年度独立の原則
⑥予算単年度主義の原則
⑦予算公開の原則

3 総計予算主義とは
総計予算主義とは、一会計年度における一切の収入及び支出を、すべて歳入歳出予算に計上しなければならないとする原則です。地方自治法210条には、「一会計年度における一切の収入及び支出は、すべてこれを歳入歳出予算に編入しなければならない」とあり、総計予算主義が規定されています。

仮に、この原則に基づかないと、ある事業の歳入と歳出を差し引き(相殺し)、必要な額のみを計上することになります。

例えば、「保育園運営事業は、全体として歳出は5億円だけど、保護者から入園料や保育料として1億円の歳入があるので、差し引き4億円を歳出予算に計上すれば良い」、または「税収として30億円あるけれど、徴収に必要な旅費や電話代などの必要経費1億円を差し引いた、29億円を歳入予算だけに計上する」というようなことになります。

こうした方法は、純計予算主義といいます。相殺した歳入予算だけ、もしくは歳出予算だけを計上するのです。しかし、これでは事業の全体像を把握することができません。

一切の歳入歳出を予算に計上することにより、予算を通じて歳入歳出の実態が明らかになり、予算の全体像を明らかにすることができます。これによって責任も明確となるため、この総計予算主義が用いられています。

4 総計予算主義の例外
総計予算主義の例外としては、一時借入金の収支、決算計剰余金の基金編入、基金の繰替運用などがあります。

一時借入金の収支については、歳計現金の不足を補い、年度内に償還することから予算に計上しません。ただし、利子のみを予算計上することがあります。

決算剰余金の基金編入については、決算剰余金を生じたときは、条例又は議決により、その全部又は一部を繰越手続きを経ず、そのまま基金に編入することができます。

基金の繰替運用については、条例の定めにより、歳計現金の不足を基金に属する現金を補うものです。利子のみを予算計上することがあります。

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