13 自治体特有の説得方法②

文書・資料作成術

前回に引き続き、自治体特有の説得方法です。

第三に、住民・首長・議員・職員から見たメリットです。読み手を説得する方法②でも触れたとおり、メリットは大事な説得材料です。しかし、自治体の場合、もう一歩踏み込んで、先の4者の視点で考えることが重要です。なお、議員視点とは、議員にはそれぞれ地盤がありますので、地域的な偏りがないかを示しています。

例えば、ある地区に子ども家庭支援センターを新設するとします。この場合、住民や首長にメリットはもちろんですが、市内全体を考えた場合、センターの地域的偏在を解消できるならば、議員視点としてもメリットがあることになります。さらに、新たに整備することにより既存のセンターの業務軽減につながれば、職員にとってもメリットになるかもしれません。このように、4つの視点からメリットを説明できれば、強力な説得材料になります。

第四に、マスコミ効果です。前項で「全国初」などは効果があることを説明しましたが、「市内企業と連携して、官民協働で事業を行う」、「大学と協定を締結して、新たなプロジェクトを実施することになった」、「住民からのクレームをきっかけに事業改善を行った」などは、アピール効果が高くなります。もちろん、無理やりウケ狙いをするのはダメですが、 こうしたアピールが住民の自治体の評価にもつながりますので、こうした視点も重要です。

第五に、民間企業等との役割分担です。そもそも新規事業を自治体で実施する意味はどこにあるのかは、税金の使い道から考えても重要です。例えば、民間企業も実施しているサービスであれば、あえて自治体で行う理由はありません。一般の市場原理に任せれば良いわけです。反対に、こうした市場がなく、自治体しか実施主体がなければ、大きな説得材料になるわけです。

ちなみに、この視点は事業を見直すきっかけなります。例えば、高齢者の介護予防促進のため、自治体が新たに福祉会館などの公共施設に機材の導入を考えたとします。しかし、既に多くの民間企業がジムなどを運営しています。このため、財政課は「わざわざ機材を導入せず、民間のジムを使ってもらえば良いのでは」と考えます。

しかし、それでは利用者の金銭的負担という新たな問題が発生してしまいます。いろいろと検討した結果、自治体は高齢者に民間のジムを安価に利用できる制度を設けました。これにより、自治体の財政負担が当初よりも減り、ジムの利用者増にもつながりました。結果的に、住民・自治体・民間企業のいずれにもメリットが生まれるというようなことになったのです。

第六に、国や社会状況の動向です。これは、その事業が社会状況に合致した内容であるかです。つまり、「現在、話題になっていることか?」ということです。例えば、こうした事業の場合、国や都道府県の補助金が設けられていることが多々あります。

ある程度の予算が必要であっても、ほとんどが国の補助金で賄われる、自治体の財政負担は少額で済むならば、大きな説得材料になります。また、補助金などがなくても、こうした話題になっているような事業は住民の関心も高くなります。このため、正に「時宜を得た事業」というのは、予算化されやすいのです。

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