12 自治体特有の説得方法①

文書・資料作成術

読み手を説得する一般的な方法については、前項と前々項で説明したとおりですが、自治体ならではの説得の方法があります。ここでは、主に新規事業の予算化にあたり、有効なものについて、まとめてみたいと思います。

第一に、費用対効果です。いわゆるコストパフォーマンスですが、簡単に言えば「投入する予算に比べて効果が大きい」、「同額の経費ならば、こちらの方がお得」などのお得感があるということです。

例えば、現在、職員が超過勤務で住民宛ての通知文書の封入作業を行っているとします。この場合、これを外部委託した際の経費と、超過勤務手当の合計額を比較し、外部委託経費の方が安ければ、当然そちらを選択した方がお得です。また、仮に外部委託経費の方が超過勤務手当の額よりも少々高かったとしても、職員のストレスなどの負担を考慮したら、総合的には外部委託した方が効果が高いかもしれません。また、委託先を障害者施設などにすれば、施設利用者の工賃アップなどの副産物も生まれるかもしれません。

次に、新たな研修の企画について考えてみます。この場合、研修生の人数が多ければ、1 人当たりの経費は安価になり、かつ多くの職員が受講できるので、全体の効果が大きくなります。これに対して、特定の職種・職層など限定した職員しか受講できなければ、単価は高くなってしまいまし、全体の効果も先のケースよりも低くなってしまいます。このように、費用対効果で導入したい研修の優位性を主張することが可能です。

ちなみに、この費用対効果を考える際、費用は長期的に考えることが必要なこともあります。例えば、何かしらのシステムを導入した際、導入経費(イニシャルコスト)は安価であっても、毎年の運営経費(ランニングコスト)が今後の財政に影響を与えることがあるからです。あくまで費用は、全体で考えることが必要となります。かつて話題になった1円入札が、まさにこのケースです。

第ニに、他自治体との比較です。「隣の市で実施している事業が効果を挙げているので、本市でも実施したい」または「全国初の取り組みとなる」などがあります。前者の場合、近くの市で効果を挙げているので、本市でも実施したいというのは大きな説得材料になります。また、首長からしても、議会から「なぜ、本市ではやらないのか?」と追及されますので、財政当局も気になるのです。

また、後者の場合は、マスコミへのアナウンス効果が期待できます。全国初でなくても、県内初、関西初でも良いのですが、こうした事業は注目されがちです。当初予算案のプレス発表などで、こうした事業があると、新聞などでも取り上げてくれます。このため、案外、財政課の査定も甘くなることもあります。

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