11 読み手を説得する方法②

文書・資料作成術

前回に引き続き、読み手を説得する方法です。

第四に、選択肢です。例えば、施設で事故が発生し、再発防止策を講じる必要があるとします。この場合、担当者が対応案を1つだけ考えて上司に示すこともありますが、複数の案を示すことも少なくありません。一般的には、3案を示します。複数の案を示されると、上司も「すべてダメだ」とは言いにくくなるため、上司に何かしらの判断を迫るには効果的な手法なのです。

3案を示す場合、それぞれのメリット・デメリットを明らかにして、読み手が判断しやすいようにします。または、①経費、②効果、③継続性、などいくつかの視点を設けて、それぞれを点数化することもあります。こうすると、評価項目が具体的なので、より判断しやすくなります。ただし、担当者としては、「この3案のうち、どれが良いですか」と判断を上司に任せるのでなく、「私としては、これが良いと思います」と示し、その理由も併せて説明します。

ちなみに、担当者が上司を誘導するために、わざと極端な2案を設けることがあります。その折衷案を3案目として、それを上司に選ばせるようにするのです。そのため、わざと「捨て案」として、2つの案をつくるわけです。これは、うなぎ屋で特上・上・並の3つがあると、多くの人が上を選ぶという「松竹梅の法則」に共通しています。

第五に、実施しないことのデメリットや、想定される課題から説明する方法です。例えば、新規事業を実施しないことで、制度の狭間にいる住民のためのサービスが手薄になってしまうなどがあります。具体的には、保育園にも幼稚園も利用せず、在宅で育児している世帯に対するサービスがあります。保育園児や幼稚園児には多額の税金を投入していますが、在宅で育児している世帯へのサービスは多くありません。このため、こうした世帯が潜在的に不満を抱えていることを説明し、サービスの必要性を説明するのです。

また、少子高齢化がさらに進行し、市の人口構造が大きく変わることは自明の理です。そうすると、生産年齢人口が減少し、市の税収も減少することとなります。このため、今のうちから、税収確保のため広告事業など、様々な歳入確保の手段を講じておく必要があります。こうしたことから、広告事業の必要性を訴えるわけです。

このように、読み手を説得するには、いくつかの方法があります。文書・資料の書き手としては、読み手を説得するためにはどの方法が効果的なのかを、十分に考えておく必要があります。書き手としては「この方法が良いかな」と思っても、読み手にとっては腹落ちしない可能性もあります。「課長には、どのように説明すれば効果的かな?」などと、読み手に応じて柔軟に考える必要があります。

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