1 赤ペン先生

困った公務員の傾向と対策

今回から、役所で良く見られる「困った公務員」の傾向と対策について、考察していきたいと思います。上司、同僚、部下など、公務員は誰しも、他人と関係を持たなくては、仕事をすることができません。しかし、皆さんも十分にご承知かと思いますが、「この人は、やっかいだなあ」、「あの上司は、いつも重箱の隅を楊枝でほじくる」など、「困った公務員」が存在しています。

こうした人々に、「どのように対応していけば良いのか!?」を真正面から取り上げ、公務の能率向上に寄与しようという崇高(?)な企画となっております。決して、「公務員時代に受けた恨みを、ここで果たしてやる!」などという個人的感情で生まれたものではありませんので、気軽にお読みください(本当です)。

さて、1回目は「赤ペン先生」です。これは、皆さんも一度は経験したことがあるでしょう。部下などが作成した起案文書、資料などを、こと細かくチェックする人です。赤ペン先生の名前の由来は、有名な某通信講座の添削をする人です。

ただ、本当の赤ペン先生と異なるのは、愛情のある温かみのある指導ではなく、「その修正は、必要ですか」というような枝葉末節なもの、もしくは「その表現は、個人的趣味なのでは?」と思われるような内容が多い点にあります。

さて、赤ペン先生の特徴には、次のようなものがあります。
①文書の内容よりも、いわゆる「てにをは」などの細かい点を修正したがる
②起案文書や資料の本来の目的(「意思決定の過程や理由が明確に書かれているか」など)よりも、細かい表現や文言にこだわる
③添削された文書・資料は真っ赤に染まり、作成当初の影も形もなくなっており、原形をとどめていない

こうした赤ペン先生が誕生する背景には、公務員の文書主義が大きく影響しています。ご案内のとおり、文書主義とは簡単に言うならば、「事案の処理は、すべて文書によって行う」、「とにかく文書を用いて仕事をする」という、公務員の仕事スタイルのことを指します。

文書主義の本来の目的は、文書にすること、つまり言語化することにより、①意思決定過程が明確になる、②後から事業実績などを検証できる、③責任の所在が明確化される、④対外的な意思表示が明確化される、などにあります。決して、赤ペン先生という怪獣を生み出すために、文書主義があるわけではないのです。

さて、こうした赤ペン先生が上司になってしまった時は、どのように対応したら良いのでしょうか。対応策としては、2つ考えられます。

1つは、自分の正当性を主張するなどして、戦うことです。ただ、難しいのは、こうした文書・資料には「唯一絶対の正解」が存在しないため、なかなか正当性を主張しにくいことです。内容が間違っているなどの大きなミスがない限りは、結局は「どちらの方が、見やすいか、わかりやすいか」の判断になってしまうので、白黒をつけにくいことが難点です。

もう1つの対応策は、黙って従うことです。これは、上司だからその指示に従わなくてはならないという消極的な意味だけではありません。先のとおり、両者に大きな違いがないのであれば、上司に従っておいた方が、実は担当者としても楽なのです。なぜなら、添削後は、上司がその起案文書・資料に責任を持つことになるからです。このため、担当者としても「これは上司が作成したもの」と割り切ることができ、その後に責任を負う必要がないのです。

仮に、係長によって真っ赤に修正された資料が、課長に渡され、そこでまた真っ赤に修正されるという「赤ペン先生地獄」が繰り返されたとしても……

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