15 融通の利かない杓子定規な人

困った公務員の傾向と対策

皆さんも、一度はお目にかかったことがあるのではないでしょうか。規則やルールに厳格で融通の利かない、杓子定規な人。見方によっては、ドラマや小説に出てきそうな、まさにこれぞ「ザ・公務員」というようなタイプです。

こうしたタイプは、日頃の何気ない会話一つでも難儀することがあります。例えば、「来年は、いよいよ係長試験だね。大変だね」などと気軽に声を掛けたとしても、「係長試験じゃなくて、係長選考ね」などと、わざわざ言い直してきたりします。

ご存じかもしれませんが、地方公務員法上では試験と選考の意味が異なることを、先の職員は述べています。簡単に言えば、「試験」とは参加条件をクリアしていれば誰でも受験できるものですが、「選考」とは特定の者がその職に相応しいかを判断するという区別があります。このことを、わざわざ訂正してくるのです。これは、なかなか厄介です。

こうしたタイプが上司だと、部下は苦労することになります。部下が作成した資料や起案文書などについては、当然、厳しいチェックが入るからです。それは、このシリーズ最初に取り上げた「赤ペン先生」でもあり、場合によっては、先のような部下の何気ない発言の一つ一つを訂正する「ガミガミ先生」でもあるからです。

また、このタイプが話をするときは、「話の核心に入る前に、前置きが延々と続く」、「使う言葉や話し方が堅苦しい」、「話そのものが長い」など、周囲を困惑させるものが数多くあります。このため、話を聞かされている周囲の人間は呆れ顔なのですが、当の本人はそうした雰囲気を察することもなく、話し続けます。そうした意味では、KYな人とも言えるかもしれません。

しかし、同じ公務員同士であれば、そうした場面で注意する人はいないでしょう。「あ~、また部長の長話が始まった」と、部下は忍の一字でひたすら耐えるのが常です。ですが、そんな上下関係のない、一般の住民はそれを許しません。

住民説明会の冒頭などに、こうした長い部長挨拶があれば、「話が長い! 早く、本題の説明に入ってくれ!」とクレームを受けてしまうでしょう。この時ばかりは、一緒に聞いている部下も「そのとおり! もっと言ってくれ」と心の中で叫んでいるはずです。しかし、翌日からは、また何事もなかったように、職場で「赤ペン先生」兼「ガミガミ先生」が復活するのは、言うまでもありません。

さて、こうしたタイプの対処法は、意外に難しいのです。なぜなら、このタイプは「間違っていない」からです。ただ、その正当性を前面に押し出すあまり、時間や周囲への配慮に欠けているのです。この点を、どのように気付かせるのかが問題です。

先の「試験」と「選考」のように、いちいち話の腰を折られて、話しが一向に進まないタイプであれば、「すみません、この後に会議があるので……」と「忙しい人を演じる作戦」を開始すれば、多少の効果はあるかもしれません。そうすれば、「間違っていない」ことから外れることはないものの、時間について多少の気遣いを見せてくれるかもしれないからです。

また、前置きが長い人には、同僚であれば、「すみません、結論を先に教えてもらって良いですか」と言えば済むかもしれません。しかし、相手が上司だと、それもなかなか難しいでしょう。そんな時は、先と同様に「すみません、部長。この後、会議があるので、あと5分ほどしか時間がないのですが……」と、「忙しい人」を演じるのも一つの方法かもしれません。

しかし、相手もなかなかのやり手で、「そうか。では、話すのは、後にしよう。時間がある時に、来てくれ。私は、いつでも良いから」などと、余計に事態を悪化させてしまうこともあります。そんな時は、自分の不幸を呪うしかありません。残念無念。

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