1 お悩み
市では、新たに障害者支援施設を整備することになりました。周辺住民の反対が予想されたため、住民説明会の前に地元の議員、町会長などに説明へ行きました。積極的な賛成者は少なかったのですが、町会長からは「地域住民には、私の方から話をしておくので大丈夫」との言葉もいただきました。しかし、説明会当日、最近転入してきたマンション住民が急に立ち上がり、反対だと言い出しました。実は新旧住民で対立があるらしいのです。今後、どのように対応していくべきでしょうか。
2 解決法
限られた情報から仮の結論を立てて検証する仮説思考を使いましょう。
仮説思考とは、限られた情報から仮の結論(仮説)を設定して、それをもとに検証、修正、実行などを行う思考法です。
お悩みで言えば、町会長が「地域住民には、私の方から話をしておくので大丈夫」と言ったにも関わらず、マンション住民から建設反対の意見が飛び出しました。町会長の影響が及んでいないことがわかります。また、「実は新旧住民で対立があるらしい」とありますので、町会派とそれ以外のグループに二分されていることもわかります。
このため、反対の理由について仮説を立てます。具体的には、①マンション住民は不動産価格の下落を懸念している、②マンション住民への事前説明がなかったことに対する市への不信感、③マンション住民は町会とは必ず対立姿勢になる、などが考えられます。
この仮説に基づき、最も可能性の高いものを選択し、対応を考えます。①ならば管理組合で説明するなどがあります。①の仮説が間違いと分かれば、他の②、③の仮説に基づいて行動していきます。
3 活用例
①会議が活性化しない理由を考える
複数の部署が参加する会議で、いつも議論が深まらない理由について仮説を立てます。①資料配布が当日のため、読み込む時間がない、②開始時刻が遅くて参加者がいつも疲労している、③会議の意義が参加者に十分に伝わっていない、などが考えられます。
参加者に直接ヒアリングして理由を聞くことが困難な場合は、仮説思考を用います。その上で、①資料を事前配付にする、②午前中に会議を行う、③参加者に個別に説明する、などの対応を行います。
②制度の不具合を見つける
職員の昇任意欲の減退から、係長試験を廃止し、主任試験のみの制度としたものの、今度は主任試験の受験者数も減ってしまったとします。多くの職員に主任試験を受験してもらうため、様々な仮説を立てて、制度を修正していきます。例えば、試験の負担が多いならば、科目を減らすなどの対応が考えられます。
4 ワンポイントアドバイス
仮説思考は、単に問題解決のためのフレームワークにとどまらず、職員としての発想力・構想力の醸成にも役立ちます。いろいろな仮説を立てられる職員は、それだけ様々な対応を考える能力があると言えます。
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