自治体には様々な問題が発生しますが、問題は必ずしも目の前にあるもの、目に見えているものとは限りません。大きなトラブルの影に隠れていたり、つい見逃してしまったりする現象の中に、本当の問題があることも少なくありません。
このため、自治体職員には問題を発見する能力が必要となります。言い換えれば、日頃の業務において問題を見極める力です。そこで、実際にどのようにして問題を見つけたら良いか、場面別に解説していきたいと思います。
まず、住民の不満・クレームです。自治体は住民福祉の向上を目的としていますから、顧客ともいえる住民の声をよく聞くことは当然のことですが、実際にどのような点に注意すれば良いでしょうか。
第一に、統計・データです。市民世論調査、住民アンケートなどは、数値として住民の意識などを把握できますので、重要な材料となります。例えば、世論調査で「重点を入れてほしい施策」として高順位の分野であれば、重点的に予算を投じることにつながります。
また、地域包括ケア計画のように、個別の行政計画を策定する場合には、高齢者などの対象を特定して調査を実施しますので、よりターゲットを絞った検討が可能となります。なお、職員としてはクロス分析のように、複数の統計・データから問題を抽出する能力も求められます。
第二に、住民からの直接の意見です。住民から直接意見を聞く機会としては、施設改修などに行う住民説明会や、行政計画策定の委員会における公募市民の意見などがあります。また、保護者説明会のように、特定の利害関係者を対象にするものもありますが、これは説得力のある意見も多く出されます。
さらに、こうした正式な場だけでなく、窓口で対応している市民からのちょっとした発言なども、住民サービスや業務の改善につながるヒントが隠れていることもあります。
第三に、広聴担当などの専用窓口からの意見です。具体的には、「市長へのはがき」「市長へのメール」、または請願・陳情などもあります(請願・陳情は市長あてでなく、議会あてに提出する方法もあります)。最近では、メールが一般的になったため、住民は意見が言いやすい環境になっています。
そのため、単なる悪口のようなものもありますが、「ホームページがわかりにくい」など、住民向けの文書を見直すきっかけになることもあります。寄せられた意見を単に機械的に処理するだけでなく、問題発見につなげることもできます。
上記以外のものとしては、SNSもあります。自治体に直接意見を伝えるのでなく、SNSで問題提起をして、そこに賛同者が集まることもあります。このため、検索力も職員には必要な能力となってきました。
さらに、注意すべきは「声なき声」「サイレントマジョリティー」の存在です。あまり自治体の動向に興味がないものの、多くの人が自治体に対して抱いている意見や感情というものがあります。これをどのように見つけ出すかは、なかなか難しいことですが、先の窓口でのちょっとした発言など、様々な機会を通じて収集することが求められます。
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