1 概 要
不利益処分を受けた職員は、人事委員会・公平委員会に対して審査請求をして、その裁決を経た後でなければ、不利益処分の取消の訴えの提起をすることができない。
2 措置要求と審査請求の比較
勤務条件に関する措置要求と不利益処分に対する審査請求を比較すると、以下のようになります。
措置要求 | 審査請求 | |
根拠 | 法46~48条 | 法49~51条の2 行政不服審査法 |
対象事項 | 給与・勤務時間その他勤務条件に関すること | 職員の意に反する不利益処分 |
対象者 | 退職者 × 臨時的任用職員 ○ 条件付採用職員 ○ |
退職者 ○ 臨時的任用職員 × 条件付採用職員 × |
要求・請求期間 | 特になし | 処分があったことを知った日から起算して3月以内(処分があった日の翌日から起算して一年を経過すると審査請求不可) |
審査機関 | 人事委員会・公平委員会 | 人事委員会・公平委員会 |
審査方法 | 口頭審理その他の方法 | 書面審理・口頭審理 |
審査事務の委任 | 不可 | 事務の一部を委員または事務局長に委任可 |
審査の結果 | ①委員会の権限事項は自ら実行 ②その他の事項は、権限を有する機関に必要な勧告 | ①承認 ②修正 ③取消 ④必要があれば是正の措置 |
3 審査請求と訴訟との関係
不利益処分を受けた職員は、人事委員会・公平委員会に対して審査請求をして、その裁決を経た後でなければ、不利益処分の取消の訴えの提起をすることができません(地公法51条の2)。これを審査請求前置主義といいます。
こうした審査請求や異議申立てを行わなければ裁判所へ出訴できないことを不服申立て前置主義といいますが、これについては国民の裁判を受ける権利を不当に制限しているとの批判がありました。このため、平成26年の行政不服審査制度の見直しに伴い、この不服申立て前置主義は大幅に見直されることとなり、他法では廃止や縮小になったりしています。
しかし、地方公務員法では、第三者的機関が高度に専門技術的な判断を行う等により、裁判所の負担が低減されるなどとして、そのまま審査請求前置主義がとられています。
ただし、審査請求前置主義には例外があり、次の場合には人事委員会・公平委員会の裁決を待つことなく、処分の取消しの訴えを提起することができるとされています(行訴法8条2項)。
①審査請求があった日から3か月を経過しても裁決がないとき
②処分、処分の執行または手続の続行により生ずる著しい損害を避けるため緊急の必要があるとき
③その他裁決を経ないことにつき正当な理由があるとき
なお、人事委員会・公平委員会の判定について、これを不服として出訴できることができるのは被処分者に限られ、任命権者その他地方公共団体の機関の側からは出訴することはできません。
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