34 予算単年度主義の原則 

自治体財政

1 概 要
①予算単年度主義の原則とは、予算は会計年度ごとに作成し、議会の議決を受けること、また一会計年度の予算はその年度内に執行・完結し、翌年度以降の予算を拘束しないという原則。
②予算単年度主義に伴う様々な問題点として、「予算を消化する」という意識を持ってしまうこと、前例踏襲になりやすい点などがある。

2 予算単年度主義の原則とは
予算単年度主義の原則とは、予算は会計年度ごとに作成し、議会の議決を受けること、また一会計年度の予算はその年度内に執行・完結し、翌年度以降の予算を拘束しないという原則です。

これは、地方自治法211条1項の「普通地方公共団体の長は、毎会計年度予算を調製し、年度開始前に、議会の議決を経なければならない」という規定が根拠になっています。

この原則の例外としては、継続費、繰越明許費、債務負担行為などがあります。

3 予算単年度主義に伴う様々な問題点
予算単年度主義の原則については、毎年度、議会の議決を受けるという民主的なコントロールが機能するというメリットがある一方、次のような問題点も指摘されています。

(1)「予算を消化する」という意識を持ってしまうこと
例えば「今年度の備品購入費には、まだ余裕があるので、何か必要なものがあれば、この際に何か買ってしまおう」というような事態が発生します。これは実はおかしいことです。

そもそも予算編成の段階で、この備品購入費の要求を行った部署は、当然のことながら、必要な備品の内容、金額の根拠などを財政課に示したはずです。なぜ、来年度この備品が必要なのかを説明し、金額についても業者から見積書をもらったりして、根拠を示すのが一般的です。また、財政課もこうした所管課の要求内容を精査して、予算額を決めているはずです。

だとすれば「今年度の備品購入費に余裕がある」という事態は、買うべき備品を正当に購入していれば、基本的に発生しません。買うべき備品を購入していなかったらそもそも問題ですが、予算要求や予算査定の内容が甘かったということも想定されます。

ただ、まったくそうした事態が発生しないかという、そんなことはありません。予算を決定した時期と購入する時期で状況が大きく変わったり(例えば、その備品が安く販売され始めたなど)、入札の結果、落札額が予算額を下回り契約差金が発生したなどの場合は、「予算が余る」ということもおきます。しかし、だからといって「予算を消化する」という発想になるのはおかしいことです。

また、こうしたケースで「予算を消化しないと、財政課に来年度の予算を削られてしまう」と考え、無理にでも予算を消化してしまうという悪循環が起こることもあります。

(2)前例踏襲になりやすい点
予算を要求する所管課は「今年度の委託料は1億円で、来年の委託内容も変わらないから、同じ1億円で要求しておけば良い」などと考えがちです。また、予算の査定を行う財政課も「今年も1億円で、来年も内容が変わらないなら、同じだ」と考えてしまったりします。

両者がこのような姿勢になってしまうと、不断の見直しが行われず、安易な予算編成になってしまうおそれがあります。貴重な財源を有効に活用することが求められているのですから、毎年度、厳しいチェックが求められます。

(3)長期的視点を持ちにくい点
毎年、「来年度の予算をどのように編成するか」ということについては気にするものの、「5年後、10年後をどうするか」という視点は、なかなか持ちにくくなってしまいます。将来的な事業のあり方や、長期的な財政運営ということを考えることも、当然行政には求められます。

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