24 給与請求権

地方公務員法

1 概 要
給与請求権とは、職員が地方公共団体に対し給与を請求できる権利のこと。

2 給与請求権とは
職員は地方公共団体に勤務を提供していますので、その反対給付として地方公共団体に対して給与を請求する権利を持っています。これが給与請求権ですが、これは一身従属的な公法上の権利とされています。

なお、この給与請求権については、基本権と支分権とに区分されます。基本権とは基本的な権利のことを指しますが、支分権とは基本権と対になる権利で、具体的に発生した権利をいいます。これを給与請求権で説明すると、ある職員Aさんが○○市に勤務していた場合、Aさんが○○市に給与を請求できるのは一般的な権利ですので基本権となります。

これに対して、Aさんが「令和○年△月の給与が支給されていないので、その分の給与を支払ってほしい」という具体的な請求、つまり過去の勤務によって発生している給与請求権は支分権となります。

この給与請求権には、この権利を譲渡や放棄ができるのか、時効はいつ完成するのか、などの問題があります。

3 給与請求権の譲渡・放棄
給与請求権の基本権の譲渡・放棄は認められません。これは、譲渡・放棄を無制限に認めると、職員の生活を脅かし、ひいては公務を停滞させるおそれがあるからです。公務員の給与は労働の対価であると同時に、その生活を保障し、公務の能率を高めようとするものです。

このため、これを譲渡・放棄すれば、公益を害するおそれがでてきてしまいます。このため、給与請求権の基本権の譲渡・放棄は認められません。

また、給与請求権の支分権についても、その譲渡・放棄は職員の生活に支障が生じますので、原則として認めるべきでないとされています。しかし、例外として職員の申出により、給与支払者が職員の生活及び公務の遂行に支障がないと判断して承認した限度で、認めることができるとされています。

4 給与請求権の時効
職員に支給される給与については、一定の期間、請求等が行わなければ、これを請求する権利は時効により消滅します

一般の債権については、民法に基づき10年間権利を行使しないと時効により消滅するとされていますが、職員の給与請求権は、労働基準法が適用されます。このため、退職手当については5年を経過すると時効によって消滅し、退職手当以外は2年を経過すると時効によって消滅します。

なお、消滅時効は権利を行使できるときから進行します。権利を行使できるとは、支払期日が定められている給与についてはその支払期日、その定めがないときは給与を支給すべき事実が発生したときとなります。

また、給与請求権は公法上の権利で、法律関係の安定性が求められます。そのため、裁判上の請求など、時効の中断または停止がなされない限り、2年を経過したときに絶対的に消滅します。このため、その後に当該給与を支払うと違法支出になります。

時効の中断とは、事項の基礎となる事実状態をくつがえすような事実が生じた場合に、時効の進行が阻止されることです。

時効の停止とは、時効完成の時にあたり、債権者が中断行為をすることが困難な場合に、時効期間の延長を認め、事項の完成を猶予することをいいます。

なお、給与請求権の時効の中断・停止については民法が準用され、中断の事由としては①請求、②差押え、仮差押えまたは仮処分、③承認があり、時効の停止については、時効期間満了時の天災事変があります。

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