19 地方債の概要 

自治体財政

1 概 要
①地方債の大きな役割としては、世代間の負担の公平と財政収支の年度間調整がある。
②地方債の対象事業は限定されている。
③地方債発行にあたっては原則として国などへの協議が必要となるが、届出制が適用になる場合もある。

2 地方債の役割
地方債は、自治体の借金ですが、家計の住宅ローンのようなものをイメージするとわかりやすいと思います。新たな公共施設を建設、学校の改修や改築、公園や橋梁の整備など、財政上、大きな負担となる場合に地方債を活用します。

地方債は、発行団体により市債、県債などと呼ばれ、予算科目の「款」の1つとして位置づけられています。また、地方債を発行して、資金調達をすることを「地方債を起こす」ということから、「起債」といいます。

地方債の役割としては、大きく2つあります。1つは、世代間の負担の公平、もう1つは財政収支の年度間調整です。

(1)世代間の負担の公平
先の例に示したように、地方債を発行する際は、大きな財政負担となる場合がほとんどです。そうした公共施設の建設等の場合は、現在の世代(住民)だけでなく、将来の世代も使用することが一般的です。

つまり、多額の借金を、長期で返済するということは、現在の世代だけでなく、将来の世代にも負担してもらい、支払ってもらうということを意味しています。簡単に言えば、「この施設は将来も使うのだから、未来の世代も負担してくださいね」ということになります。
 
(2)財政収支の年度間調整
地方債を活用するような事業は大きな財政負担となりますので、仮に地方債を活用しなければ、単年度、もしくは工事費を支払う2、3年で多額の予算を必要とします。

そうすると、そうした年度だけ予算規模は大きく膨らみ、事業が終了すれば、予算規模はまた元に戻るという、アップダウンの激しい、「凸凹」の財政運営になってしまいます。

これでは、安定した財政運営とはいえません。このため、地方債を活用することにより、年度に大きな変化がないように調整することができるのです。

3 適債事業
地方債は、自治体の借金となるわけですが、どんな名目でも良いというわけではありません。地方債を発行できる事業は、地方財政法5条に限定列挙されています。

具体的には、次の通りです。
①公営企業に要する経費
②出資金及び貸付金
③地方債の借換えに要する経費
④災害応急事業費、災害復旧事業費及び災害救助事業費
⑤公共施設、公共施設の建設事業費

この他、他の法律の特例措置として地方債を発行できる場合があります。なお、このように地方債の対象となる事業を適債事業といい、前者の地方財政法5条に基づく地方債を5条債、後者の特例措置により発行するものを特例債といったりします。

4 協議制・届出制・許可制
地方公共団体が地方債を発行するときは、原則として、都道府県及び指定都市にあっては総務大臣、市町村にあっては都道府県知事と協議を行うことが必要とされています。

しかし、平成24年度より、地域の自主性及び自立性を高める観点から、地方債協議制度を一部見直し、財政状況について一定の基準を満たす地方公共団体については、原則として、民間等資金債の起債にかかる協議を不要とし、事前に届け出ることで起債ができる事前届出制が導入されました。

なお、実質公債費比率が一定の比率以上など、決められた財政指標などに該当する自治体では、地方債の発行は協議や届出なく、許可が必要となります。

コメント

タイトルとURLをコピーしました