10 好き嫌いが激しい人

困った公務員の傾向と対策

職場で一緒に働く同僚、もしくは直属の上司として困るタイプの1つに、好き嫌いが激しい人がいます。これは、とにかく何に対しても、好き嫌いを露骨に表現する人と言えるかもしれません。他人に対する好き嫌い、業務の好き嫌いなどが代表例でしょう。

他人に対する好き嫌いであれば、簡単に言えば、自分にとって「敵か、味方か」を意識して、それが人に対する唯一の評価軸になっているのです。なお、この場合、評価される人は、実際に対面する人には限らず、「〇〇部長は、太っているから嫌い」など、これまで一回も口を聞いたことがない人でも、好き嫌いの対象になります。とにかく、「好きか、嫌いか」のどちらかに区分しないと気が済まないのです。

業務に対しても、好き嫌いを露骨に示す人がいます。ある中堅職員が、出先事業所である図書館から、福祉事務所へ異動となりました。本人は、市民課が第一希望で、福祉事務所は最も避けたい部署でした。そのため、内示があってから、それまでは関係が良好だった、直属の上司である図書館長にさんざんと悪態をつき、他の職員に図書館長の悪口を言って回ったそうです。嫌いな業務のために、人も嫌いになっていったのです。

こうした好き嫌いの激しい人は、他人や業務だけに限らず、服装、忘年会のお店、異性のタイプ、料理、キャラクターなど、様々なことに「好き嫌い」を持ち出してきます。このため、そうしたタイプが同僚になってしまうと、嫌でもそうした話を聞かされるので、かなり厄介です(最近は、コロナの「おかげ」で会話が控えられているのは、不幸中の幸いだったかもしれません)。こうしたタイプは感情面が豊か、もしくは激しいせいで、どうしてもこの好き嫌いを出さずにはいられないのかもしれません。

さて、公務員の世界で困ってしまうのは、これが派閥につながることです。仮の話ですが、A部長のグループにはB課長、C課長などがいて、X部長のグループにはY課長、Z課長などが属しており、両者が対立していたとします。

こうした対立は、案外、一般の職員にも知られていることが少なくありません。これは、出身大学や高校による学閥、出身地域別の派閥、純粋な仲良しグループなど、いろいろあります。こうした派閥抗争を理解しておかないと、一般職員であっても「なぜB課長だけに説明して、Y課長には伝えていないんだ。それでは、後で問題になるだろ」というような事態を引き起こしてしまいかねませんので、注意が必要です。

こうした役所内の派閥抗争は、以前からよくあることです。先の例で言えば、A部長が副市長になれば、X部長グループのメンバーは、左遷させられることになるでしょう。これは、民間企業でも同様かもしれませんが、「勝てば官軍、負ければ賊軍」だからです。このため、出世を目指す職員にとっては、どの派閥に属するのかは、極めて重要な問題になったりするのです。

しかし、そうした出世とは関係なかったとしても、職場にいる好き嫌いの激しい人への対応方法はなかなか難しいものがあります。「嫌い」の方に組み入れられて、目の敵にされるのは困りますが、「好き」のグループに入ってしまい、変にベタベタされるのも厄介だからです。

このため、「つかず離れず」の微妙な距離感で付き合うのが最も良いのですが、相手の感情量があまりに豊かなために、「敵か、味方か」のどちらかに色付けされてしまう危険性は高いと言わざるを得ません。最悪、嫌われないためには、「共通の敵を作ることで、一体感を演出し、自分が敵でないことをアピールする」という手段もあります。

ただ、この場合、蟻地獄のように、いずれ「好き」グループに引きずり込まれることを覚悟しなければならないかもしれません。気が付いたら、しっかりグループのメンバーとして活躍していたなんてことがあるかもしれません。昇任試験とは異なり、本人申込制ではありませんので、ご注意ください。

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