事件・事故はトラブルそのものですから、自治体にとっては正に解決すべき事柄です。この事件・事故の発生は、職員に様々な業務改善のためのヒントを与えてくれます。なぜなら、もし防ぐことができた事件・事故であれば、その対応を行わなかったという不作為があることを示しているからです。不作為がなくなれば事件・事故はなくなり、業務改善につながります。
そこで、この事件・事故を業務改善につなげるための視点について、具体的に考えてみたいと思います。
第一に、事前に対応していれば、防ぐことができた事件・事故のケースです。例えば、「同一世帯に、誤って手当を2回振り込んでしまった」「施設の老朽化により、壁が崩れた」などは、今でもよくマスコミで報道されます。前者であれば、情報システム上のエラーチェックを、後者であれば、定期的な施設の点検を行えば、防ぐことはできたはずです。
しかし、実際にはそれを怠り、事件・事故は発生してしまったわけです。こうした場合には、問題点を明確にし、対応策を考えて、再発防止につなげていく必要があります。
第二に、事前に対応できない事件・事故のケースです。例えば、地震などの自然災害の発生を防ぐことはできません。しかし、地震の被害を最小限に抑えることができたかは、別の問題です。地震が発生しても、できる限り被害を減らす「減災」の取組を行ってきたかは、自治体にとって大事な視点です。同様に、交通事故から児童生徒を守る、振り込め詐欺から高齢者を守る、などもあります。
このように、発生件数をゼロにするのは難しいものの、被害を最小限にする危機管理能力も重要な視点になってきます。
第三に、職員の意識啓発以外の取組です。このような事件・事故が発生した場合、よく「職員の意識が不十分だった」と指摘されます。もちろん、職員のモラル意識が欠如していたために「生活保護費を着服した」などの事態が発生します。
しかし、「生活保護費を職員が物理的に盗めない」仕組みや制度をつくることも大事です。例えば、保護費をすべて銀行振り込みにすれば盗むことはできません。
このように、事件・事故の再発防止策を「職員の意識の徹底」だけに頼らないことが必要です。そのためには、職員の行動に横串を指すような、仕組み・制度の視点が重要です。
上記のように、事前の対応で防ぐことができた事件・事故ならば、再発防止のための問題点を明確にして、対応策を講じます。事前の対応が不可の場合は、被害を最小限にするための取組みを考えます。そして、いずれの場合も、解決策を考える場合には、「職員の意識の徹底」だけでなく、仕組みや制度の構築を考えることが大事になります。
1つの事件・事故の背景には、制度的な欠陥が存在しているものの、たまたま大きな事件・事故にならなかっただけということもあります。小さな事件・事故の段階で、早急に問題を見つけて、大きな事件・事故にしないことが求められます。
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