1 概 要
①地方公共団体の当局は、登録職員団体から適法な交渉の申入れがあった場合には、その申入れに応じなければならない。
②管理運営事項については、交渉できない。
③一定の要件により、交渉は打ち切ることができる。
2 交渉とは
地方公共団体の当局は、登録職員団体から適法な交渉の申入れがあった場合には、その申入れに応じなければなりません(地公法55条1項)。
職員団体とは、職員が勤務条件の維持改善を図ることを目的として組織する団体ですので、当局と話し合い、交渉を通じて目的を達成することは重要な役割です。申入れの内容は、①職員の給与、勤務時間その他の勤務条件、②①に附帯する社交的または厚生的活動を含む適法な活動に係る事項、とされています。
また、地方公共団体からみれば、登録職員団体は人事委員会または公平委員会に公証された団体ですから、その申入れに応ずべき地位に立つこととなります。非登録職員団体から交渉の申入れがあった場合には、応じなくても構いませんが、職員の勤務条件の維持改善のために望ましいと判断して交渉することもできます。なお、登録職員団体・非登録職員団体とも、適法な交渉は勤務時間中に行うことができます。
交渉の結果、合意内容に基づき、法令や条例等に抵触しない範囲で、当局と職員団体は書面による協定を締結することができます。当局と職員団体は、誠意と責任をもってそれを履行するという道義的責任が課されることとなります。
3 交渉できない事項
地方公共団体の事務の管理および運営に関する事項については、交渉の対象とはなりません(地公法55条3項)。地方公共団体の当局が自らの責任と権限によって執行すべき行政上の管理及び運営に関する事項を、一般に管理運営事項といいますが、これについては職員団体と交渉はできません。
その理由は、管理運営事項はあくまで地方公共団体の責任で執行するものですので、職員団体がそれに関与することは本来の役割から外れてしまうためです。
管理運営事項の具体的な内容としては、地方公共団体の組織に関する事項、職員定数、職員の配置に関する事項、地方税、使用料、手数料などの賦課徴収に関する事項、予算編成に関する事項、条例の企画、懲戒処分、分限処分などがあります。
4 交渉のルール
交渉にあたっては、議題、時間、場所その他必要な事項をあらかじめ取り決めて行います(地公法55条5項)。交渉に先立ってこれらの事項を取り決める準備手続を予備交渉といいます。予備交渉を経ないでなされた交渉の申入れは、拒否することができます。
交渉の当事者は、地方公共団体については「当局の指名する者」となります。職員団体については、役員の中から指名することとなりますが、特別の事情がある場合は役員以外の者を指名することもできます。これは交渉事項が専門的で弁護士などを代表者とするような場合です。こうした場合には、職員団体から交渉の委任を受けたことを文書で証明する必要があります。
5 交渉の打ち切り
以下に該当する場合は打ち切ることができとされています(地公法55条7項)。
①上記の構想のルールに適合しなくなったとき
②他の職員の職務の遂行を妨げたとき
③地方公共団体の事務の正常な運営を阻害することとなったとき
コメント