これまでの各章で様々な思考法・フレームワークについて解説してきましたが、多くはロジカルシンキングに属するものです。これに対して、ラテラルシンキングについては、具体的な思考法・フレームワークは確立されていません。
皆さんには、次回以降で具体的な問題を解いていただき、併せて具体的な思考法をご紹介します。本項では、ラテラルシンキング全般に共通する、基本的な視点をご紹介します。
1 問題や前提を疑う
ラテラルシンキングも問題解決のための手法ですが、まずは様々なことを疑う姿勢が求められます。問題をそのまま鵜呑みにせず、「そもそも、それは問題なの?」、「問題の前提は変えられないの?」などと考えていくと、違った面が見えてきます。
その一例です。ある旅館で、夕食後に客がなかなか部屋に戻らないことを悩む客がいました。遅くまで残っていると、後片付けができないからです。しかし、ある人が「客が残っているのは、居心地が良い証拠」といったことで、主人はかえって残っていることを喜ぶようになったのです。このように、同じ事実でも解釈を変えると全く反対の意味になります。
ロジカルシンキングでは「いかに客を部屋に戻すか」が命題となりますが、ラテラルシンキングでは、そもそも「客をすぐに部屋に戻すことが必要か」から問いを発します。
2 先入観を捨てる
人は自分でも気付かないまま、先入観を持ってしまいます。上司から、「あれは、終わった?」と聞かれ、「あれ」の意味が実は違っていたなんてことは、誰でも経験するものです。
「ラテラルシンキングで発想の可能性を広げる」で取り上げた「13個のオレンジを3人に公平に分ける」でも、オレンジのまま分けなければならないと考えてしまう人がほとんどです。出題者は、決してそのようなことを言っていないのに、我々は勝手に思い込んでしまうのです。
このような暗黙の先入観に気付けるか、は大事かポイントです。多くの人は、「オレンジジュースにしていいなんて、言われていない」と憤慨するかもしれません。しかし、人に言われなくても、それに気づき、自分の先入観を捨てて問題を考えられるかが大事なのです。
3 視点を変える
視点を変えることで、問題は全く違って見えることがあります。地域で発生した問題は、自治体職員からすれば行政課題ですが、民間企業から見ればビジネスチャンス、地域住民からすれば住民のコミュニケーションの良い機会かもしれません。次も一例です。
病院にあるMRIの機器は重厚感があり、患者には威圧感さえ与えます。このため、検査を受ける子供たちは怖がってしまい、なかなか検査ができなかったそうです。このため、病院のスタッフは機器に装飾を施し、アトラクションのようにしたのです。
すると、子供たちは怖がらなくなったそうです。このように、大人目線でなく子供目線で問題を捉えること、つまりは、視点を変えて考えることがラテラルシンキングには求められます。
コメント