40 守秘義務

地方公務員法

1 概 要
①地方公務員には、秘密を守る義務がある。
②秘密には「職務上知り得た秘密」と「職務上の秘密」がある。

2 守秘義務とは
地方公務員には、秘密を守る義務があります(地公法34条)が、そのポイントは以下のとおりです。
①職員は、退職後も含めて、職務上知り得た秘密を漏らしてはいけない。
②法令による証人等となり、職務上の秘密事項を発表する場合は、任命権者の許可を受けなければならない。

行政は非常に多くの情報を扱いますが、職員がその情報を漏らしてしまえば、個人や企業は大きな不利益を被ったり、不快に感じたりします。これでは、信頼される行政運営を行うことは不可能となります。このため、守秘義務があるのです。

3 秘密とは
まず、ここでいう秘密とは何を指すのかについて整理します。秘密とは、一般的に了知されていない事実で、それを了知せしめることが一定の利益の侵害になると客観的に考えられるものとされています(行実昭30.2.18)。どれが秘密にあたるかについては個々に判断されることになりますが、具体例としては、未発表の採用試験問題、課税台帳などがあります。

なお、秘密には「職務上知り得た秘密」と「職務上の秘密」があります。「職務上知り得た秘密」とは、職員が職務の執行に関連して知り得た秘密で、自ら担当する職務に関連する秘密だけでなく、担当外の事項であっても職務に関連して知り得たものも含まれます。

これに対し「職務上の秘密」は、職務上の所管に関する秘密に限定されます。つまり、「職務上の秘密」は、「職務上知り得た秘密」の一部ということになります。

例えば、税務職員が特定個人の滞納額を漏らすようなことは「職務上の秘密」の漏えいにあたり、教員が家庭訪問の際にたまたま知った家庭の私的事情を漏らすことは、「職務上知り得た秘密」を漏えいすることになります。

なお、この守秘義務は退職後も課せられます。

4 秘密事項の発表の許可
職務上知り得た秘密は漏らしてはいけないのですが、法令による証人等となり、秘密を発表する場面も出てきます。それは、民事事件に関して裁判所で証人として訊問される場合、刑事事件に関して証人として訊問される場合、地方公共団体の議会の調査に伴い証言を請求された場合、人事委員会・公平委員会の権限の行使に伴い証人を喚問した場合などがあります。

こうした際に、「職務上の秘密」を公表する場合には任命権者の許可を受けることが必要です。これはあくまで「職務上の秘密」に限られ、「職務上知り得た秘密」であって「職務上の秘密」でないものについては、許可は必要としません。

また、離職した者が発表する場合は、その離職した職またはこれに相当する職の任命権者の許可を受ける必要があります。

そして、任命権者は、法律に特別の定めがある場合以外は、許可を与えなければならないとされています。このような法律に特別の定めがある場合とは、例えば民事訴訟においては、任命権者が公共の利益を害し、または公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがあると判断した場合などがあります。

なお、正式な手続きを踏まずに秘密を洩らした場合には、罰則があります。現に職員の場合は、懲戒処分の対象となると同時に、1年以下の懲役または3万円以下の罰金という刑罰の対象となります(地公法60条2号)。退職者も懲戒処分はありませんが、刑罰の対象となります。

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