もしも、昇任試験受験の意志を固めていたら、その人にとっては水を差す話になってしまうかもしれません。しかし、老婆心ながら、また長い役所経験上からも、お伝えしておいた方が良いと思うのです。それは、せっかく昇任したにも関わらず、その後に降任してしまうことがあることです。
降任とは、文字通り、現在のポストから下のポストに降りることです。課長だった人が係長になる、係長が主任になる、などのパターンです。その理由は、親の介護や子育てなど、終了時期が決まっている場合もあります。これらは、その期間を乗り切るために 一時的に業務の負担を軽くするものですので、特に問題ありません。
ここで取り上げたいのは、「課長になったけど、議員と上手くやっていけないので、係長に戻りたい」や「係長になったけど、部下の指導がどうしてもできない。なので、また主任で頑張りたい」、また心を病んでしまうなどで、どうしてもその職責を果たせないような場合です。
このようなケースは、最近では結構増えています。課長から係長へ、係長から主任へ、は珍しくなくなっています。メンタル上に問題を抱えてしまい、降任してしまうのです。昇任前は、「自分は大丈夫」と思っていても、やはり昇任してみないとわからないことは少なくありません。また、たまたま運が悪く、ひどい上司や部下に巡り合ってしまった、紛糾している課題を担当することになってしまった、などがあり得るからです。
このため、「降任することもあり得る」ことを、頭の片隅に入れておいた方が良いと思います。昇任後の仕事が上手くいかず、「降任なんて、恥ずかしい。降任するくらいだったら、役所を辞める」と思ってしまう人もいます。そうした人の多くは、残念ながら退職していまいます。おそらく、昇任前に降任することなど、全く想定していなかったのでしよう。確かに、昇任前から降任について考える人は少数です。しかし、昇任前に少しでも降任について考えていたら、すぐに「降任 → 恥ずかしいこと → 退職」との発想にはならないはずです。
なお、降任のことを考えておくと、昇任後も謙虚な気持ちで職務に従事できます。「強権的なリーダーシップで課を運営していったら、係長たちに反発されて、自分は孤立してしまうかも」と、ある程度の予防策を考えることができるからです。その意味からも、降任について考えておくことは無駄にはなりません。さらに、メンタルに限らず、病気や障害などの理由の降任も考えられます。そうした時でも、動揺せずに対応できるよう、事前に降任について考えておくことは、やはり大事だと思うのです。
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