このタイトルを見て、「あ、あのタイプだな」とわかる方は、それなりの経験を積んできた職員かもしれません。
このタイプは、次のような課長です。例えば、複数の課長が集まる会議があるのですが、その課長は会議の主催者です。つまり、会議の事務局の課長として、全体の取りまとめを行う責任者です。このため、複数の課から資料を集めた上で、①会議次第の作成、②資料番号の添付、③会議の進行シナリオの作成、といったことを行う必要があります。
しかし、これらの作業を実際に行うのは、課長ではなく、係長や担当者です。このため、係長たちは、他の課へ資料要求したり、議題の順番を考えたりするわけです。そして、全部が完成したら、「課長、明日の会議の資料一式と進行シナリオが揃いました。ご確認ください」と言うのです。そして、課長は全体をチェックするわけです。
「そんなこと、部下なんだから、当たり前ではないの」と思うかもしれません。確かに、作業分担は、課長と係長以下で先のように行うことは、当然のことです。しかし、「部下が段取りをしないと、何もできない上司」には、次のような特徴があるのです。
それは、係長から示された資料等について、「良い・悪い」の判断をしないことです。正確には、「判断をしない」というよりも、「判断できない」かもしれません。これは、課長その人が、もはや仕事に対してやる気を失っていたり、そもそもポストに必要な能力を持ち合わせていなかったりすることなどが理由です。
課長がやる気を失った理由は、もはや自分はこれ以上のポストにはいけないことを認識している、定年直前で仕事に対するモチベーションはない、などいくつかの理由が考えられるでしょう。また、そもそも能力不足というのは、上の人間の人事配置のミスが大きな原因でしょう。
少し話がズレますが、皆さんはピーターの法則をご存じでしょうか。これは、「組織人は有能であれば昇進するが、それ以上の能力がなければ、そこの地位にとどまる。つまり、どこの階層も、いずれは無能な人で埋め尽くされるという法則」(公務員実務用語研究会著『公務員版 悪魔の辞典』学陽書房)です。公務員であれば、誰しもこの法則にうなずいてしまうのではないでしょうか。
さて、こうした上司は、もはや単なるお飾りとなっています。このため、「あの資料は、できた?」、「結局、オレは何をすれば良いの?」、「部長から、資料の間違いを指摘されたよ。もう少し、きちんと確認してね」などという発言が多くなり、係長以下の職員の神経を逆なでします。
では、この困った上司は、何もせず、ただ与えられるのを待っているだけかと言えば、そうではないのです。例えば、先の会議のケースであれば、会議直前に他の課から追加資料が送付されることになったのですが、係長は先の課長にそのことを伝え忘れてしまいました。そのため、会議の場で、その資料を見た課長は、慌ててしまい、会議の進行を間違ってしまったのです。
会議自体には、特に何の問題もなかったものの、会議終了後、課長の係長を呼び出して怒るのです-「オレは聞いていない!」と。そうです、こうしたタイプは普段は何の指示や判断をしないのですが、自分の役職をないがしろにされるようなことがあると、烈火のごとく怒り狂うのです。本当に厄介です。
さて、こうしたタイプには、どのように対応していくのが良いのでしょうか。個人的な経験ですが、「何も判断しない課長だ!」とこちらが怒りに震えても、何ら良いことはありません。職員が怒っても、その課長の性格が変わるわけでもなく、他の課長に変わるわけでもないからです。
ベストとは言えないかもしれませんが、ベターな方法としては、係長以下が考えるように課長が行動するよう、上手くコントロールすることでしょう。言い方は悪いかもしれませんが、操り人形状態です。そうすると、腹の虫もおさまるでしょう。
ただ、どうしても「自分は何もしないくせして」と、許せないときもあるかもしれません。そんな時は、わざと間違えたシナリオを渡して、会議で恥をかかせるというのも、策の1つかもしれません。
会議終了後に、「係長、困るよ。間違っていたじゃないか」などと指摘されれば、「申し訳ありません!」とオーバーリアクションを取りつつも、「でも、課長。会議前に、資料やシナリオは確認していただきましたよね」と、そっと告げてあげても良いかもしれません。
コメント