38 法令等及び上司の職務上の命令に従う義務

地方公務員法

1 概 要
職務の遂行にあたっては、職員は法令や条例などに従うとともに、上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない。

2 法令等に従う義務
職務の遂行にあたっては、職員は法令や条例などに従うとともに、上司の職務上の命令に忠実に従わなければならないとされています(地公法32条)。この規定は、法令等に従う義務と、職務命令に従う義務の2つに区分することができます。

まず、法令等に従う義務です。職員は、その職務を遂行するにあたって、法令、条例、地方公共団体の規則、地方公共団体の定める規程に従わなければなりません。これは、当然のことのように思えますが、ポイントは「その職務を遂行するに当たって」という点です。

あくまで業務を行うためのものですので、職務の遂行に関係のない法令や、職員が一市民として遵守しなければならない法令に違反したとしても、それはこの地公法32条に違反したこととはなりません(もちろん、その法令に違反したことは問題となります)。

3  職務命令に従う義務
次に、職務命令に従う義務です。職員は職務を遂行するにあたっては、上司の職務上の命令に忠実に従わなければなりません。これにはいくつかのポイントがありますので、区分して説明します。

①上司
まず、上司とは誰かということです。例えば、市民課に管理係と市民係とあったとします。管理係の係員から見て、管理係長および市民課長は上司になりますが、市民係長は上司ではありません。上司は指揮監督する権限を持つ者だからです。

また、上司は、職務上の上司と身分上の上司の2つに区分することができます。職務上の上司とは、職務の遂行について職員を指揮監督する者で、身分上の上司とは、職員の任用、分限、懲戒などの身分取扱いについて権限を有する者です。

一般には、「職務上の上司=身分上の上司」となることが多いのですが、必ずしもそうならない場合があります。例えば、地方公共団体の長に属する職員が、他の執行機関(教育委員会、議会事務局など)に従事することを命じられたような場合は、職務上の上司は当該執行機関ですが、身分上の上司は長となります。

②職務命令の種類
上司の職務上の命令は、一般に職務命令といいます。職務命令は、職務上の命令と身分上の命令に区分することができます

職務上の命令とは、職務の執行に直接関係する命令をいい、例えば、公文書を起案する命令、出張の命令などがこれにあたります。また、身分上の命令とは、職務の執行とは直接関係ない命令で、病気療養の命令などがあります。職務上の上司だけが、職務上の命令をできます。

職務命令が有効に成立するためには、①権限ある上司から発せられたこと、②職務に関するものであること、③実行可能であること、の3つが必要です。②の例としては、納税課の職員に保健に関する事務の職務命令をしても無効です。③の例としては、犯罪行為を命じられても、それは職務命令とはなりません。

③職務命令に対する部下の審査権
部下の職務命令に対する審査権とは、上司の職務命令が当然無効であるか否かを判別することです。これは部下の価値判断に基づくものでなく、客観的な認定を指します。

例えば、職務命令に重大かつ明白な瑕疵がある場合は、その職務命令は当然無効です。具体的には、政治的行為の制限に違反して特定の候補者の選挙運動を行うような命令や、職務専念義務に違反して職場を放棄するような命令などがあります。

コメント

タイトルとURLをコピーしました