37 服務の根本基準と宣誓

地方公務員法

1 概 要
①職員は、全体の奉仕者として公共の利益のために勤務し、かつ、職務の遂行に当たっては、全力を挙げてこれに専念しなければならない。
②職員は、条例の定めるところにより、服務の宣誓をしなければならない。

2 服務の根本基準
職員は、全体の奉仕者として公共の利益のために勤務し、かつ、職務の遂行に当たっては、全力を挙げてこれに専念しなければならないとされています(地公法30条)。これを服務の根本基準といいます。

服務とは、職務に服することをいいますが、先の条文は、前段の「全体の奉仕者として公共の利益のために勤務すること」と後段の「全力を挙げてこれに専念」に区別できます。

前段の「全体の奉仕者として公共の利益のために勤務すること」は、憲法15条2項で「すべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない」との規定に基づくものです。全体の奉仕者とは、地方公務員といえどもその地域だけの奉仕者でないことは当然のこと、政治的にも特定の政党に偏るのでなく、中立であることを意味しています。

また、公共の利益は国民全体に奉仕するという公務員の使命そのものですが、具体的に何が公共の利益に該当するかについては、その時々の社会状況などによって、決定されることとなります。当然のことですが、この公共の利益の追求という点が、利益など特定の目的を追求する民間企業と大きく異なる点です。

後段の「全力を挙げてこれに専念」は、一般に職務専念義務をいいます。しかし、この職務専念義務については、地公法35条でより具体的に規定されていますので、この部分の説明は別項で行います。なお、このように30条と35条と重ねて規定したことは、これが服務の基本原則であるため強調するためといわれています。

また、この職務専念義務は倫理的な義務であると同時に、広い意味での契約に相当するものとされています。

3 服務の宣誓
職員は、条例の定めるところにより、服務の宣誓をしなければなりません(地公法31条)。この宣誓は、職員としての自覚を促すものですが、任命権者に対する宣誓ではなく、住民に対する宣誓です

また、職員の服務上の義務は、この宣誓によって生じるものではありません。職員として採用されたことによって、当然に服務上の義務は生じるのです。このため、宣誓は、職員が服務上の義務を負うことを確認するものです。

ただし、この服務の宣誓は、職員の義務ですので、行わなかった場合は、服務義務違反となり、懲戒処分の対象になるとされています

なお、服務の宣誓は条例に定められています。いつ、どこで、どのような方法で行うか、実際の服務の宣誓の内容なども条例に規定されます。宣誓の内容は、次のようなものです。

「私は、ここに、主権が国民に存することを認める日本国憲法を尊重し、かつ擁護することを固く誓います。私は地方自治の本旨を体するとともに、公務を民主的かつ能率的に運営すべき責務を深く自覚し、全体の奉仕者として誠実かつ公正に職務を執行することを固く誓います。」

一般には、役所の職員となった入庁式などで、宣誓書に署名してから、首長の前で宣誓するのが一般的です。

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