雑誌やネットで特集される「困った上司ランキング」や「嫌いな上司アンケート」などで、必ずと言っていいほど、上位に位置するのが、この「人によって態度を変える」タイプです。これは、上司はもちろんのこと、同僚がそんな人であっても嫌なものです。
このタイプは、基本的には「上の人間には従順、下の人間を見下す」ということになります。つまりは、偉い人には腰が低く、自分よりも立場の低い人には強気に出るという、ドラマや漫画にもよく登場する、わかりやすい嫌なタイプです。
このように、多くの人から敬遠されるタイプなのですが、こうした人は結構多いのです。しかし、当の本人にはそんな意識がなく、これまたわかりやすく部下に嫌われるのですが、そんなことにお構いなく、「上の人間には従順、下の人間を見下す」ということを、日常的に繰り返しています。
公務員の場合、昇任とともに権限が大きくなります。それは民間企業でも同様ですが、公務員の役職者は、一企業とは異なり、その権限は地域全体にかかりますので、やはり影響力は大きいものがあります。そのため、こうしたタイプが上司になると、職場だけでなく、地域住民などとの間でトラブルに発展してしまうこともあります。
このタイプは、昇任とともに、「人によって態度を変える」場面が多くなります。当たり前ですが、何の権限もない一般職員には「下の人間」に該当する人がいませんので、そうした場面があまりないからです。しかし、係長や課長などの「長」の付くポストになれば、そうした傾向が露骨に出てきます。
こうしたタイプの心理を考えてみると、実はコンプレックスの裏返しということも少なくありません。以前から、自分自身に強い劣等感を持っており、非常に自己肯定感が低いのです。このため、自分にとって相手が「上か、下か」を常に意識してしまい、その結果、そうした態度になるのではないかなと考えています。また、こうしたタイプの特徴は、よく人を値踏みして、「彼はできる」とか「〇〇は使えない」などと平気で言ったりします。
こんな嫌なタイプなので、部下から避けられているのは言うまでもありません。文字通り、部下を顎で使いますので、部下にとっては迷惑千万なのです。しかし、そんな部下の気持ちをスカッとさせてくれる時があります。例えば、次のような場面です。
窓口を訪れた住民が、たまたまトイレから帰って来て、窓口にいた上司に話しかけます。こうしたタイプは、住民さえも下に見ていたり、小馬鹿にしていたりするところがありますから、言葉遣いも自然と上から目線となります。「あのね、おじいさん。そんなんじゃ、ダメですよ」と平気でダメ出しをしたりします。
その時、住民がすかさず「私は、〇〇町会の町会長だが……」などと身分を明かしたところ、吃驚仰天、上司は態度を豹変させ、急に丁寧な言葉遣いになったりするのです。そんな様子を見ながら、部下たちは心の中で万歳三唱を叫ぶとともに、おそらく水戸黄門の印籠を思い出してしまうことでしょう。
さて、こうしたタイプへの対抗策はいくつか考えられますが、ここでは2つだけご紹介しておきましょう。1つは、できるだけ距離を取ることです。このようなタイプの人間は、「本人に注意すれば、態度を改める」というものではありません。基本的に、部下や同僚からの意見には、耳を貸さないでしょう。このため、注意しても、結局はムダに終わってしまう可能性が高いのです。このため、普段からできるだけ近づかないのが効果的なのです。
先の町会長の例であれば、町会長が激怒して、その上司に対して怒りまくったり、さらにその上の上司に苦情を言いに行ったりすれば、態度は改まるかもしれません。しかし、残念ながら、なかなかそんなに都合よく水戸黄門は登場しません。
もう1つは、その上司よりも偉くなって見返すという方法です。仮に、部下であれば、その上司から受けたツライ気持ちをバネにして昇任試験を受験し、そして、いつしかその上司の上司になって、積年の恨みを晴らすというのも1つの手かもしれません。ツライ気持ちが大きいほど、試験勉強にも真剣に取り組みますので、極めて効果的な対応策と言えるでしょう。
しかし、そのように昇任した本人が、気が付いたら、いつの間にか「人によって態度を変える」人になっていた、なんていうのでは困るのですが……
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