1 概 要
①自治体の資金運用を考える場合には、償還差益と償還差損に注意する必要がある
②償還差益と償還差損を含めて、利回りがどうなるのかをおさえておく
2 償還差益と償還差損
国債や地方債も債券は常に額面どおりの価格でなく、その時の売買価格によって変動するため、償還差益と償還差損という事態が生じます。
これは、自治体の資金運用者の立場になってもらうとわかりやすいと思います。例えば、現在、財政調整基金にまとまったお金があり、一般的な普通預金(流動性預金)に預けていたとします。しかし、このまとまったお金は、来年5月までは特に使う予定はないため、このまま金利の安い普通預金に預けていたのでは、たいした利息は期待できません。
このため、資金運用者は、銀行などの定期性預金に預けるか、国債や他の自治体が発行している地方債などの債券を買って資金運用をすることを検討します。もちろん、他にも金融商品はありますが、自治体における資金運用ですので、元本割れするような金融商品は対象外となります。その結果、債券を購入することとしました。
債券は、前項でも説明したように、額面金額と売買価格が必ずしも一致しませんので、額面100万円の債券を98万円で購入したり、101万円で購入したりすることがあるのです。
額面よりも高い金額で購入することは、何かおかしいように感じるかもしれません。しかし、その債券の金利が高く、購入時に多少高かったとしても、満期までに利息を得られ、満期時には額面の金額を受け取ることができれば、現在新規に発行している債券よりも、結局は得だったということも当然あるわけです。
反対に額面よりも低い売買価格の債券は、現在、新規に発行している債券よりも金利が低いことなどが、その理由として考えられます。
このように、発行金額と売買金額に差があることから、償還差益・償還差損は生じるのですが、これに金利のことも勘案し、「結局、利回りはどうだったのか」をおさえておくことが大事になります。
3 償還差益のケース
償還差益の具体例です。
例えば、額面金額100万円(利率2%・期間2年)の債券を、100万円で購入した場合には、利回りは2%となり利率と同様になります。しかし、この債券を99万円で購入した場合には利回り2.53%となり、利率を上回ります。
これは、年間の利息2万円の他に、額面金額と購入金額の差1万円の収益(償還差益)を満期時に得ることができ、これを1年に換算すると5千円となり、(2万円+5千円)/ 購入金額99万円=2.53%となるためです。
4 償還差損のケース
次に、償還差損の場合です。
同様に、額面金額100万円(利率2%・期間2年)の債券を、101万円で購入した場合には、利回りは1.49%となり利率を下回ることになります。
これは年間の利息2万円があるものの、購入金額101万円のため額面金額100万円との差1万円の損失(償還差益)が満期時に発生するためです。これを1年に換算すると5千円となり、(2万円-5千円)/ 購入金額101万円=1.49%となるのです。
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