46 形式収支・実質収支・単年度収支

自治体財政

1 概 要
①決算で黒字・赤字を判断する際には、いくつかの見方がある
②形式収支とは、歳入決算額から歳出決算額を単純に引いたものをいう
③実質収支とは、形式収支から翌年度に繰り越すべき財源を控除した額をいい、自治体の実質的な黒字・赤字を示す

2 形式収支
その年の決算が、黒字なのか赤字なのかを考える際に、歳入決算額と歳出決算額を比較することになりますが、これについてはいくつかの見方があります。

まず、歳入決算額から歳出決算額を単純にひいたもの(歳入歳出差引額)を形式収支といいます。これは、出納閉鎖期日(5月31日)における当該年度中における収入された現金と支出された現金の差額で、現金主義における単純な差引収支となります。

形式収支が黒字の場合は、歳計剰余金(一会計年度における実際の収入額から実際の支出済額を差し引いた残額)を処分することになりますが、赤字の場合は翌年度の歳入を繰上充用することになります。これは、出納整理期間において、歳出に対し歳入が不足しているため、支出義務を履行できないためです。

3 実質収支
実質収支とは、形式収支から翌年度に繰り越すべき財源を控除した額をいい、当該年度における実質的な収入と支出の差額をみるものです。翌年度に繰り越すべき財源とは、地方自治法に基づくものと、決算状況調査による決算統計上のものの2種類があります。

地方自治法に基づくものとしては、継続費逓次繰越額、繰越明許費繰越額、事故繰越繰越額3つの繰越財源(歳出予算の翌年度繰越額から未収入だが翌年度に確実に収入が見込まれる国庫支出金、地方債などの未収入特定財源を差し引いたもの)となります。

決算統計上のものとしては、より実態に近い財政状況を知るため発生主義を徹底し、この3つの他に、事故繰越額と支払繰延額(当該年度に支出義務が発生している債務について、その支払いを翌年度に繰り延べたもの)があります。

この実質収支は、自治体の実質的な黒字・赤字を示すものですので、自治体の財政運営を判断する重要なポイントとなります。もちろん黒字であることは重要ですが、多ければ多いほど良いというものではなく、あまりに多いのであれば、行政サービスの向上や、住民負担を軽減に充てられるべきと考えられます。なお、一般的には、標準財政規模の3~5%程度が望ましい水準と言われています。

反対に、実質収支が赤字の場合で、一定限度を越えた場合には、地方債の発行が制限されることとなります。

4 単年度収支
単年度収支とは、当該年度のみの収支結果をみるもので、当該年度の実質収支から前年度の実質収支を差し引いた額をいいます。実質収支は前年度以前からの収支の累積となっていますので、当該年度のみの単年度の収支の状況を把握するためには、当該年度の実質収支から前年度の実施収支を差し引く必要があります。

単年度収支が黒字であるということは、前年度の実質収支が黒字の自治体であれば、実質収支の黒字が増えたことを示しています。反対に前年度の実質収支が赤字の自治体であれば、赤字が減少したことを示しています。

また、単年度収支が赤字ということは、前年度の実質収支が黒字の自治体であれば、剰余金を使ってしまったということになります。反対に前年度の実質収支が赤字の自治体であれば、赤字が増加したことになります。

コメント

タイトルとURLをコピーしました