文書・資料を作成する書き手にとっては、読み手に納得してもらったり、理解してもらったりすることが文書・資料作成の目的となります。そのためには、読み手が文書・資料を読み、「確かに、その通りだ!」と納得させる理論武装、つまり理屈が必要です。この読み手を説得する方法について、まとめてみたいと思います。
第一に、メリット・デメリットです。例えば、新規事業を企画したのであれば、その事業を行うメリットがあるはずですから、それを明確にしておく必要があります。市道の整備であれば、近隣住民が迂回しなく済むなどがあるかもしれません。しかし、整備には当然ながら予算が必要となりますので、役所にとってはデメリットになります。
このように、「誰にとって」メリット・デメリットなのかを明らかにする必要があります。両方を勘案した上で、それでもメリットが上回るのであれば、事業の実施を判断することになります。また、デメリットを関係者で認識することは大事です。後で、デメリットによる問題が発生したとしても、関係者でリスクを共有できているので、「それは、以前から想定していたことだ」で済ませることができるからです。
第二に、データ・統計です。同じく新規事業の企画理由が、住民の意識調査に基づくなどが考えられます。例えば、住民の「市政に期待すること」の第1位が防災対策であり、その中でも特に浸水・津波に対する不安が大きいとします。そうすれば、浸水ハザードマップを全戸配布する事業などを実施する理由となります。
また、施設の稼働率、申請者数、利用者数、予算額に対する決算実績などは、数値でその事業の状況を明確に示しているとも言えます。このため、こうした数値が低いと、財政課は予算額の削減を求めてきます。なお、こうしたデータ・統計を複数活用してクロス集計することで、新たな傾向を導くことができます。例えば、施設の時間別稼働率と利用者の属性から、会議室の利用状況について「平日の午前中は、女性の高齢者の利用が多い」などです。
第三に、論理性です。これは、簡単に言えば「コロンプスは人間である。人間は必ず死ぬ。よって、コロンプスは必ず死ぬ」のような三段論法(演繹法)が代表例です。これは、「コロンプスは人間である」との観察事項に、「人間は必ず死ぬ」(ルール・法則)から、「コロンプスは必ず死ぬ」との結論を導いています。
これを公務員の文書・資料に当てはめるならば、次のようなものが考えられます。「生活保護受給者が増加している」(観察事項)+「予算は効果的に活用する必要がある」(ルール・法則) →「不正受給防止のため、受給者の資産調査を厳格に行う必要がある」(結論)です。この場合、「生活保護受給者を減らさなければいけない」との結論を導いてしまうのは誤りです。このため、この論理を用いる場合には、常識的に妥当なのかを判断しなければなりません。
こうした論理の手法は、三段論法(演繹法)以外にも、帰納法、MECE、ロジックツリーなどいろいろあります。
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