8 情勢適応の原則

地方公務員法

1 概 要
①地方公共団体は、給与・勤務時間その他の勤務条件が社会一般の情勢に適応するように適当な措置を講じなければならない。
②人事委員会は講ずべき措置について議会及び長に勧告することができる。

2 情勢適応の原則の意義
地方公共団体は、給与・勤務時間その他の勤務条件が社会一般の情勢に適応するように適当な措置を講じなければならないこと、また人事委員会はこうした規定に基づき講ずべき措置について議会及び長に勧告することができるとされています(地公法14条)。これを情勢適応の原則といいます。

この原則については、民間企業で働く者と比較するとわかりやすいと思います。民間企業の労働者の労働条件は、労使が対等の立場で「契約自由の原則」に基づいて決定されます。このため、労働条件は、社会情勢の変化や経済の変動に即応して弾力的、機動的に変更することが比較的容易です。

これに対して、地方公務員の給与、勤務時間、休日、休暇などの勤務条件は、法律及び条例によって決定される勤務条件法定主義となっており、職員の勤務条件は硬直的になりがちです。このため、この情勢適応の原則により、地方公共団体が社会情勢の変化に対応して適時適切な措置をとるよう義務を課しているのです。

3 人事委員会の勧告
人事委員会は、講ずべき措置について、議会及び長に勧告することができます

人事委員会は、人事評価、給与、勤務時間その他の勤務条件、厚生福利制度その他職員に関する制度について絶えず研究を行い、その成果を地方公共団体の議会もしくは長または任命権者に提出することとされています(地公法8条1項2号)。

また、人事行政の運営に関し、任命権者に勧告することも人事委員会の権限です(地公法8条1項4号)。さらに、人事委員会は、毎年少なくとも1回、給料表が適当であるか、議会及び長に報告するものとされ、給料額を増減することが適当であると認めるときは、あわせて適当な勧告をすることができます(地公法26条)。

こうした権限に加え、職員の勤務条件に関する制度について、それを決定する権限を有する議会及び長に対する勧告権を認めるものです。ただし、勧告を行うか否か、勧告を行う場合の内容をどのようにするかは人事委員会の裁量に委ねられています。

給料表に関する勧告は、毎年少なくとも1回、給料表が適当であるか否かについての報告と一緒にされなければなりません。しかし、職員の勤務条件に関する制度の勧告は、独立した勧告として行うことができます。

なお、この規定については、企業職員・単純労務職員・独法職員については適用されません。

コメント

タイトルとURLをコピーしました