議員は、地域住民や関係団体からの依頼で質問することも少なくありません。例えば、空き地となっている市有地があり、その付近の地域住民から公園設置の要望があったとします。しかし、市としては待機時対策として保育園の整備を考えており、両者の意見が食い違っていました。
こうした時、議員は住民の公園整備の要望を市側に直接伝えますが、市側からはなかなか良い返事がもらえません。しかし、住民からの声は高まるばかりです。このため、ある意味では白黒をはっきりさせるために、その議員が本会議や委員会の場で質問するわけです。
そうすると、市側は正式な見解として答弁するわけですから、その時点での考え方を明確に示さざるを得ません。この質問と答弁によって、この一件については、一応の決着を見ることになります。
もちろん、地域住民の声がすべて質問につながるわけではありません。この例で言えば、議員が市側に直接伝えた際に、「市としては保育園を考えていたが、住民要望もあるので、もう少し検討したい」と市の担当者が言えば、一度はそこで収まり、質問には至らないことも当然あるわけです。
こうしたことから考えると、質問には市側の公式見解を引き出すことができるという効果があることがわかります。また、議員からすれば「住民の意見を、市側にぶつけた」という役割を果たしたことで、住民からの評価を得た(もしくは、票につながった?)と、見ることができるかもしれません。
ただ、大事なことは、質問した議員が、本当に公園を整備した方が良いと思っているか否かは別問題であるということです。言い方は良く無いのですが、議員として票を得るために、地域住民の声を市に伝えるという役割を果たしただけと、言えなくもないからです。
実際に、議員の本音は保育園整備なのかもしれません。地域住民の声も、実際に公園整備で一本化されていることは稀です。子育て家庭にとっては、保育園を望む声の方が大きいかもしれません。公園整備は、実は、発言力のある町会長の意向などが中心になっているかもしれないわけです。議員としては、やはりこうした人物の影響を無視することはできないのです。
その意味では、議員自身も、質問するリスクを負っているわけです。「公園を整備すべきだ」と質問すれば、それは議員の意見にもなり、保育園整備派の住民との間で対立関係を生じさせてしまうかもしれないからです。
そのため、表現を変え、「地元では公園を整備すべきとの意見があるが、市はどう考えるか」と質問することで、やや他人事のように質問することもあるのです。このように、同じような質問であっても、その背景はいろいろと違うこともあるのです。
ちなみに、こうしたことは、住民だけでなく企業やNPOなどの団体からの依頼ということもあります。
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