1 概 要
①首長は、毎会計年度予算を調製し、年度開始前に、議会の議決を経なければならない
②地方自治法97条2項では、議会による予算の増額修正ができることを明記している
2 予算の提出と審議
予算の提案権は首長のみであり、議員にはありません。首長は、毎会計年度予算を調製し、年度開始前に、議会の議決を経なければならないとされ、都道府県及び指定都市は30日前、その他の市及び町村では20日前までに議会に提出しなければなりません(自治法211条)。また、首長は議会に予算を提出するときは、予算に関する説明書を併せて提出する必要があります。
予算が議会に提出されると、議長は本会議に上程します。通常は、総括質問を行い、次いで委員会に付託します。一般的に、当初予算を審議する際には、特別委員会が設置され、そこで集中的に審議されます。補正予算については、当初予算同様に予算特別委員会が設置されることもありますが、常任委員会で審議されることもあります。
委員会の審査の結果が本会議に報告され、本会議がこれを受けて討論、表決を行うことになります。
なお、予算の中で議会の議決の対象となるのは、議決科目である款項であり、執行科目である目節は対象となりません。
また、予算の議決があったときは、議長は当該予算を3日以内に長に送付する義務があります(自治法219条1項)。このように予算は議会の議決によって成立するのが原則ですが、例外的に専決処分によって成立することがあります。
3 予算の増額修正権
予算の提案権は首長のみであり議員にはありませんが、地方自治法97条2項では、議会による予算の増額修正ができることを明記しています。しかし増額修正には一定の制約があり、首長の予算の提案権を侵すことはできないとされています。
つまり、首長が提案した予算の趣旨を損なうような増額修正はできないとされています。その具体的判断は、当該増額修正をしようとする内容、規模、当該予算全体との関連、当該地方公共団体の行財政運営における影響度等を総合的に勘案して、個々の具体の事案に即して判断すべきものとされています。
なお、予算の修正には増額だけでなく減額修正もありますが、減額修正については、基本的には制約がありません。これは、首長が提出した予算案を減額するため、増額とは異なり、長の提案した内容と大幅に変わることがないと考えられるためです。また、もし予算案そのものに反対であれば、減額でなく否決することもできるためです。
減額修正の対象となるのは、首長により提出された予算案です。例えば、補正予算案の減額修正については、原則として補正の対象とされていない部分については修正することができず、補正予算案に関する部分のみが修正が可能となります。
4 予算と条例・規則との関係
長は、条例その他議会の議決を要すべき案件が新たに予算を伴うこととなるものであるときは、必要な予算上の措置が適確に講ぜられる見込みが得られるまでの間は、これを議会に提出してはならないとされています(自治法222条1項)。
これは自治体の健全な行財政運営を期するため、執行機関の自己統制を求めるものです。「予算上の措置が適確に講ぜられる見込み」とは、一般的には、関係予算案が議会に提出されたときであると解されています。
また、長または委員会等が予算を伴う規則その他の規を制定またはか遺影が新たに予算を伴うこととなるものであるときは、必要な予算上の措置が適確に講ぜられるまでの間は、制定または改正してはならないとされています(自治法222条2項)。
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