本項からは、ラテラルシンキングの具体的な発想法について解説します。実際に、自治体にも関係する事例を出題しますので、皆さんも問題を解きながら、読み進めてください。なお、これまで述べたように、ラテラルシンキングでは「正解」はなく、複数の答えがあります。このため、ここで紹介する答えもその1つと考えください。
【問題1】
市民まつりは、市の最大のイベントです。当日は、様々な地方の名産品が安く販売されることもあり、開始時刻前から入口に多くの市民が並んでいます。開始とともに、多くの人が名産品販売ブースに向かって走り出すため、毎年、危険な状態が発生しています。職員は入口付近で注意しているのですが、効果がありません。どうすれば良いでしょうか。
【解 答】
答えは、①入口の隣に販売ブースを置く、②抽選販売にする、③事前にネットで販売・支払いまで済ませ、当日は受け取るだけにする、などが考えられます。
ロジカルシンキングの発想で「どうしたら市民を走らせないか」と考えると、①警備員を配置する、②入口から販売ブースまでの専用通路を設ける、③購入専用の入口を設ける、などの方法が考えられます。しかし、これではいずれもコストが発生してしまいます。
このため、ラテラルシンキングでは「安く買いたい市民に、安全に名産品を売る」と問題設定を変えます。すると、先のような答えが浮かんでくるのです。これならば、ロジカルシンキングの答えよりも、ずっと安価で実現できます。
ちなみに、かつて大阪万博では、同様に入口から走り出す来場者への対策が必要だったそうです。この時、主催者は小さな会場案内図を配ったそうです。走りながらでは文字は小さくて読めないため、走る人はかなり減ったそうです。
【問題2】
県庁のある課は、常に忙しい部署で慢性的な人手不足になっています。毎年、担当課長は定数増を要求しているものの、人事課長は「人件費増となり、認められない」と言うばかりです。そこで、担当課長は自分のアイデアを伝えたところ、人事課長はあっさりと了承したのです。その結果、人手を増やすことに成功しました。その具体的方法は会計年度任用職員の活用でもないのですが、どのような方法でしょうか。
【解 答】
答えは、「研修派遣として市町村職員を受け入れる」です。これならば、県庁職員も人件費も不要です。ここでも「いかに県庁職員を増やすか」または「いかに定数増するか」ではなく、「人手を増やすにはどうするか」と問題の設定を変えるのです。
ちなみに、この手法は実際に活用されているらしいのですが…。
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