19 フェルミ推定で論理的に推論・概算する

問題解決のためのフレームワーク

1 お悩み
8050問題に対応するため、対象世帯に保健師や社会福祉士などの専門職を派遣する新規事業を考え、予算要求しました。しかし、財政課の担当者からは「そもそも対象世帯は何世帯なのかがわからないと、査定できない」と言われてしまいました。実は、対象世帯数を調査したことはなく、要求額も明確な根拠を持たないまま、担当者の感覚で見積もってしまったのです。財政課を納得させる、何か良い方法はないでしょうか。

2 解決法
特定できない数値を推論・概算するため、フェルミ推定を使いましょう。

フェルミ推定とは、特定や調査できない数を、論理的に推論して概算するものです。実際の問題としては、「アメリカのシカゴには何人のピアノ調律師がいるのか」、「日本に電柱は何本あるか」などが有名な例です。

前者であれば、以下のように考えます。①シカゴの人口は300万人とする、②シカゴでは、1世帯あたりの人数が平均3人程度とする、③10世帯に1台の割合でピアノを保有している世帯があるとする、④ピアノ1台の調律は平均して1年に1回行うとする、⑤調律師が1日に調律するピアノの台数は3つとする、⑥週休二日とし、調律師は年間に約250日働くとする、とデータを仮定します。

次に計算を行い、①シカゴの世帯数は、300万÷3=100万世帯程度、②シカゴでのピアノの総数は、100万÷10=10万台程度、③ピアノの調律は、年間に10万件程度行われる、④それに対し、1人のピアノの調律師は1年間に250×3=750台程度を調律する、⑤よって調律師の人数は10万÷750=130人程度と推定される、と結論付けます。

なお、フェルミ推定では前提等の違いで、結果が大きく変わります。

3 活用例
①予算要求の根拠
お悩みのように、実際には特定できない数値について、財政課を納得させるためにフェルミ推定を活用します。この例ならば、他市などで対象世帯数を実態調査していれば、世帯数に対する出現率がわかります。これを用いて、自分の市の世帯数にかければ算出できます。

②議会答弁対策
議員から、これまで調査したことがないデータなどについて質問され、どうしても答弁しなければならない時があります。「調査していないので、わかりません」では、「行政は、およその数も算出していないのか!」と追求されてしまうようなケースです。こうした時にも、「あくまで1つの考え方ですが」と前置きして、フェルミ推定を使うこともできます。

4 ワンポイントアドバイス
フェルミ推定は、イタリアの物理学者エンリコ・フェルミがその名前の由来ですが、現在では外資系企業の面接試験でも出題されます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました