62 問題発見の視点⑥ ミスの発生 

問題解決のためのフレームワーク

自治体では、よくミスが発生します。先に取り上げた事件・事故はマスコミで報道されるような出来事に対し、このミスは事務的なものです。このため、問題意識を持たなければ、一般的には見過ごしてしまうような軽微な内容です。

事例としては、起案文書や会計書類の不備、上司や関係部署への連絡漏れ、作成資料や印刷物の誤り、統計・データの集計ミス、メールの誤送付、重要なファイルの消去などが考えられます。

職員であれば誰でも「うっかりミス」を経験するものです。もちろん、こうした経験を通じて職員が学習し、次回からミスがなくなれば、それで問題はありません。しかし、ミスが繰り返されるようであれば、そこには何かしらの問題があることを疑うべきです。そこで、次のような点について注意が必要です。

第一に、ミスを起こしてしまう構造的・制度的な欠陥がないかということです。例えば、スポーツ施設で入館者を時間別・男女別・年齢別で集計するとします。この場合、一人の職員が入館者の来るたびにチェックしていては、なかなか間違いを無くすことはできません。

入館者の情報を含んだIC入館証を利用者に持たせれば、いちいちカウントする必要なくなります。もちろん、導入経費が必要ですが、入館者を数える職員の人件費を考えれば、一概に高額とは言えません。システム導入で、ミスをなくすことができます。

第二に、エラーチェック体制があるかということです。例えば、定例的な起案文書でありながら、いつも文書担当係から修正を求められるとします。このような場合は、起案した職員のスキルよりも、係・課として起案文書の作成・チェック体制に問題があることになります。

対応策として、起案文書のチェック項目を一覧表にしておきます。これにより、起案者、係長、課長など、複数でエラーをチェックすることが可能となり、ミスを無くすことが可能となります。

第三に、職員個人がミスを起こさないような環境が整備されているかということです。例えば、新人職員が役所の情報システムを熟知していないため、メールを誤送付してしまう、電子決裁に必要な合議者を含めていなかった、ということがあります。

これは、もちろん職員個人の問題もありますが、組織全体で考えた場合、十分な研修制度や操作説明会を実施していなかったという問題が見つかることもあります。つまり、職員個人の問題とするのでなく、組織の問題として捉えるわけです。

このように、1つのミスであっても、その背景に潜む問題を複数見つけることができます。もし、職員にこうした問題意識がなければ、「単なる事務上のミス」と見逃してしまいます。しかし、それが後々、重要な事件・事故の要因になったり、実は大きな問題の兆候であったりすることもあるので、職員としては注意が必要です。

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