1 概 要
①分限処分も懲戒処分も、職員に対する不利益処分。
②分限処分とは、公務能率の維持を目的として不利益な身分変動を与えるもの。
③懲戒処分とは、義務違反に対する責任を問うもの。
2 分限処分・懲戒処分の意義
分限処分も懲戒処分も、職員に対する不利益処分です。公務を遂行していく上で、能率や秩序の維持のために、職員に処分を与えることが必要な場合があります。職員本人の意思とは関係なく不利益な処分をするため、地方公務員法では分限処分と懲戒処分が定められています。しかし、分限処分と懲戒処分とでは、趣旨や目的が異なります。
分限処分は、公務の能率の維持およびその適正な確保という目的から、一定の事由がある場合に、職員の意に反する不利益処分を行うことです。一定の事由とは、職員がその職責を十分に果たすことができないことをいいます。十分に職責を果たすことができないため、公務の能率は維持できませんので、職員に不利益処分を与えることができるのです。
分限処分は職員の意に反する処分ですので、職員の意に反しない処分は分限処分ではありません。例えば、退職の勧奨に従い、職員が自発的に退職すれば、分限処分とはなりません。
なお、分限処分には、免職、降任、休職、降給の4つがあります。
懲戒処分は、公務員としての義務違反、公務員としてふさわしくない非行がある場合に、その責任を確認し、科される制裁です。職員の義務違反に対する道義的責任を問うことにより、公務における規律と秩序を維持することを目的とする処分です。
なお、懲戒処分には、戒告、減給、停職、免職の4つがあります。
3 職員の身分保障としての意義
分限処分も懲戒処分も不利益処分ですから、公正に行われることが必要です。任命権者が恣意的に処分したり、外部から不当な圧力を受けたりすることは排除しなければなりません。このことは、職員の身分を保障していることにつながるのです。
つまり裏を返せば、法律・条例による分限処分・懲戒処分でなければ職員に不利益処分を与えることができないのです。仮に不当に分限処分・懲戒処分が行われた場合は、不利益処分に対する審査請求を行う権利が認められ、さらにこれらの処分が違法な場合は、行政事件訴訟法に基づいて出訴することができます。
こうした公務員の勤務関係は公法上の関係であるのに対し、民間労働者は、雇用の期間の定めがなければいつでも雇用契約の解約の申入れをすることができることと比較すると対照的です。
4 分限処分と懲戒処分との関係
分限処分と懲戒処分は、先に述べたように目的は全く異なります。しかし、実際問題として共に職員の不利益処分という同じ効果を持ちますので、両方の処分を重ねて行うことが可能かという問題があります。
例えば、ある職員が職務命令に従わないようなことがあったとします。この場合、職務命令に従う義務(地公法32条)への違反として懲戒処分とすることができます。一方で、こうした職務命令に従わないことは職員の性格によるものであると判断して、職に必要な適格性を欠くものとして分限処分とすることもあります。
このような場合、いずれか一方の処分を行うか、両者を行うかは、事案の内容に従って任命権者が適切に判断すべきものとされています。
また、分限処分・懲戒処分という職員への不利益処分は、任命権者がその権限を持っています。仮に、職員が刑法などの法令に違反して刑罰が科されることがありますが、その刑罰とは性格が異なります。このため、刑罰を受けた職員に対し、分限処分・懲戒処分を行うことは可能です。
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