職員としての経験が長くなると、大勢の人前で話す機会も増えてきます。庁内会議、住民説明会、関係団体との協議、人によっては研修講師を依頼されることもあるでしょう。こうした、大勢の人前で話すというのは、なかなか緊張するものです。
私自身も、まだ中堅職員の頃から、何度か経験してきました。庁内の関係職員を集めた説明会、複数の自治体の課長が集まった会議、議会事務局での複数の議員への説明などです。しかし、これらは単発の業務でした。本格的に、人前で話す機会を持つようになったのは、研修講師を行うようになってからです。
研修講師の場合、短くても30分、通常は1.5~2時間、長い時は7時間にも及びます。管理職昇任前後から、役職上、依頼されることが多かったのですが、当初は「失敗しちゃいけない」、「つまらないと思われたら、どうしよう」と不安に思っていました。しかし、回数を重ねるうちに、わかったことがあります。
それは、「皆さん、一緒に楽しい時間を過ごしましょう」との気持ちが大事だということです。受講生を前にして「さあ、これから教えますよ!」と上から目線の意識では、緊張して、顔もこわばってしまいます。それよりも、笑顔で「楽しくやりましょう」という雰囲気の方が気楽なのです。
「しかし、つまらない話と思われたら、どうしよう」と考える人もいるかもしれません。しかし、研修に限らず、大勢の人に向けて話をするとき、全員が「良い話だった」と思うことはまずありません。それは、研修後の感想を見ればわかります。必ず「良くなかった」との感想が出てしまうものなのです。
こうした少数の否定的な意見を気にしてしまうと、おどおどした話し方になってしまいます。すると、話の内容としては問題ないのに、自信のない話し方だけに、受講生につまらなく聞こえてしまうという悪循環を起こしてしまうのです。
これは、精神的にも良くありませんし、受講生の理解を得るまでに時間もかかってしまいます。このため、「どのように話しても、全員を満足させることはできないのだから、自分の思っていること、考えていることを、素直に伝えよう。それで、ダメだったら、仕方ない」と思うようになったのです。
聞き手に立場で考えても、こわい顔で話されるよりも、笑顔で語りかけられた方が気持ち良いはずです。このため、大勢の前で話しをする時は笑顔を意識した方が、お互いにとって良いのです。もちろん、緊張のあまり、話し手はひきつった笑顔のことも多いのですが……
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